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核廃絶「全アプローチ」重視 賛同国拡大へ配慮 核不使用の共同声明案

 核兵器の非人道性と不使用を国連総会で訴えるため、有志国が準備している共同声明の草案の内容が12日、判明した。これまで日本が賛同を見送る理由になった「いかなる状況下でも核兵器が二度と使われないことが人類存続の利益になる」との一文がそのまま盛り込まれた。一方、核兵器廃絶への「全てのアプローチ」を重視する文言が新たに加わり、米国の核抑止力に頼る日本を含め、幅広い政策の国が相乗りできる形になっている。

 同様の声明は過去3回まとめられ、日本は賛同していなかった。北朝鮮の核開発など東アジア情勢が緊迫する中、「いかなる状況下でも」の文言が安全保障政策と矛盾すると問題視してきたが、今回は方向転換。起草国のニュージーランド側と事前に接触して修正を求めた上で、岸田文雄外相は11日、賛同する方針を表明していた。

 中国新聞が入手した草案は、核兵器の非人道性について「人間の生存、環境、社会経済の発展、将来世代の健康に深刻な影響を与える」と説明。「最初に使われた瞬間から明白になった」と述べることで、地名は明示しないものの広島の被害の悲惨さを強調する。

 過去の声明は核兵器の「非合法化」に言及し、日本が加われない理由としていた。ことし4月にスイス・ジュネーブで発表された前回声明からは「非合法化」がなくなった。4月の声明は核兵器使用への国際人道法適用に触れたが、それも今回の草案にはなくなり、国際法で使用を阻止する色彩が薄くなった。

 段階的な核兵器廃絶を進める政策と相いれないことも日本が賛同しない理由とされてきたが、草案には廃絶への「全てのアプローチ」を重視することが盛り込まれた。米国の「核の傘」の下にいる日本の立場にも配慮したとも受け取れる。

 声明は17日(現地時間)以降に出される予定で、関係国が文言の最終調整を進めている。(田中美千子)

核兵器の不使用に関する共同声明
 2010年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議が核兵器使用による壊滅的被害に懸念を表明したのを受け、核兵器の非人道性に着目した議論が活発化している。ニュージーランドなど16カ国は12年のNPT再検討会議第1回準備委員会の際に核兵器の非人道的側面を強調する共同声明を発表。その後も2度、同趣旨の声明を出した。核軍縮に熱心なノルウェーは今年3月、首都オスロで核兵器の非人道的影響を議題にした国際会議を開いた。

(2013年10月13日朝刊掲載)

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