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被爆地の首相 言葉選ぶ プーチン氏 核戦力の行使示唆

 ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻に当たって「ロシアは世界で最も強力な核保有国の一つだ」と威嚇する発言をしたことに対し、被爆県広島の国会議員らは25日、「もっての外だ」などと批判した。与野党幹部も猛抗議する中、核なき世界を掲げる岸田文雄首相(広島1区)は言葉を選んだ。(桑原正敏、樋口浩二、中川雅晴)

岸・林氏も発言に触れず

政府・与野党幹部

 岸田首相は参院予算委員会前の朝に急きょ記者会見を組んだ。プーチン発言に対し、被爆地広島を地盤とする政治家としてどう対応するのか―。ライフワークとする核兵器廃絶に向けた真価に関わる質問を受けた。

 ウクライナへの軍事侵攻は国際法違反に当たるとして「到底容認することはできない」と強く批判。ただ核兵器という文言は、首相の口から出てこなかった。

 本来なら敏感に反応すべき岸信夫防衛相(山口2区)と林芳正外相(山口3区)も会見で首相と同じく軍事侵攻を批判し邦人保護を強調。プーチン発言に自ら触れる場面はなかった。

 これに対し岸田内閣で核軍縮・不拡散問題などを担う被爆2世の寺田稔首相補佐官(広島5区)は取材に「核戦力を振りかざす言動は、唯一の戦争被爆国として許せない」と語気を強めた。ロシアも加盟する核拡散防止条約(NPT)が、核兵器保有国に核軍縮義務を課していることを指摘。「核軍縮どころか核戦力を誇示して威嚇する姿は国際規範に反しており、強く抗議する」と述べた。

 自民党と連立を組む公明党の石井啓一幹事長は会見で「万が一にも核兵器の使用に至らないよう、日本は国際社会と連携すべきだ」と強調。立憲民主党の泉健太代表はプーチン発言を「ありえない蛮行だ」とし「核兵器使用を口にすることがないよう、厳重に非難したい」と会見で述べた。

時代に逆行/問題外/現実の脅威に

広島の与野党議員

 「あきれかえる。核軍縮をどう進めるか考えるべきなのに、まさに時代に逆行する発言だ」。自民党の被爆者救済と核兵器廃絶推進議員連盟で事務局長を務める平口洋氏(広島2区)は憤りを隠さない。

 与野党の垣根を越え、被爆国として抗議の意思を示すべきだと考える。「国会決議はしないのかね。われわれ議連も何らかの対応が必要だと思っている」

 首相が率いる岸田派所属の宮沢洋一氏(参院広島)もウクライナ侵攻を「主権・人権を踏みにじった」と断じ、核兵器で脅しをかけるプーチン氏を「問題外の指導者だ」と切り捨てた。

 公明党の日下正喜氏(比例中国)は、1994年のブダペスト覚書に目を向ける。ロシアは、ウクライナが自国内の核兵器を放棄するのと引き換えに安全保障を約束した。それが破られた。「言語道断だ。核超大国が力任せにねじ伏せる暴力で、核廃絶に向けた世界の願いを踏みにじった。断じて許すことはできない」

 立憲民主党の森本真治氏(参院広島)は「核兵器が現実の脅威であることが明白となった」と指摘。日本維新の会の空本誠喜氏(比例中国)はプーチン氏の発言は「第2次大戦以降の平和維持装置を壊す行為だ」と述べ、国際社会がまずは経済制裁の足並みをそろえるべきだと訴えた。

(2022年2月26日朝刊掲載)

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