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プーチン大統領、軍事侵攻に反対の国々を威嚇… 核使用示唆 被爆地怒り ウクライナ侵攻

「許せない。言いたい放題」

「全世界に対する挑戦だ」

 ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領が24日の演説で「ロシアは世界で最も強力な核保有国の一つだ」などと発言したことに対し、広島の被爆者や平和団体から25日、強く非難する声が上がった。核兵器の使用を示唆し、軍事侵攻に反対する国々を威嚇するプーチン氏。被爆者団体は相次いで抗議声明をロシア側に送った。

 「許せない。核兵器禁止条約にも背を向け続けており、言いたい放題だ」。広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(79)は怒りをあらわにした。今年は核兵器禁止条約の初の締約国会議や核拡散防止条約(NPT)再検討会議が予定される中、核兵器廃絶への議論の冷え込みも懸念した。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(77)も「ロシアはNPT加盟国として核軍縮の義務を負っているのに」と憤る。「ロシアが核で脅しても、毅然(きぜん)として核に頼らず事態を解決するべきだ」と、国際社会の冷静な対応も求めた。

 NPT再検討会議が開かれるのを念頭に、ロシアや米国など核保有5大国の首脳は1月、「核戦争に勝者はおらず、決して戦ってはならない」とする共同声明を発表した。「核政策を知りたい広島若者有権者の会」の田中美穂共同代表(27)=広島市西区=は「声明の内容をほごにする発言で、核軍縮に本気で取り組んでいない姿勢が表れた」と指摘した。

 国内外で証言活動をする被爆者の田中稔子さん(83)=東区=は2012年に訪れたウクライナの現状に胸を痛める。「禁止条約の加盟国も増える中、核兵器を脅しの手段に使うなんて。外交努力で一刻も早く侵攻を終わらせて」と願った。

 抗議声明の発表も続いた。広島の被爆者7団体は核使用の示唆に「再びヒバクシャをつくる事態を阻止しなければならない」。県原水協は「人類と全世界に対する挑戦だ」と批判した。いずれもファクスでロシア大使館に送った。

 広島市の松井一実市長は「被爆者の平和への思いを踏みにじるもので、強い憤りを覚える」とのコメントを発表。広島県の湯崎英彦知事もコメントで「被爆地の知事として到底容認できない」と強調した。

(2022年2月26日朝刊掲載)

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