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絵本に託す平和の願い広島の佐藤さん2000部作製 折り鶴再生紙を使用

 入市被爆者の佐藤広枝さん(75)=広島市西区=が、兄を捜して広島の街を歩いた体験を絵本「ピカドン きのこ雲の下で見つけた宝物」にまとめた。未来を担う子どもたちに平和の思いを受け継いでもらおうと、原爆の子の像(中区)に寄せられた折り鶴の再生紙を使って2千部作製。206ある広島市立小中学校全てに5冊ずつ寄贈した。(増田咲子)

 絵本は縦23センチ、横21センチで32ページ。佐藤さんの文章に、東広島市の画家、南有田秋徳(みなみありた・あきのり)さんの水彩画や、交流のある口田小(安佐北区)児童の絵などを添えている。

 佐藤さんは被爆当時は7歳。今の廿日市市に疎開していた。兄は広島市立造船工業学校(現市立広島商業高)1年で、材木町(今の平和記念公園)辺りで建物疎開作業をしていた。その兄を捜しに母親らと出掛けた街は変わり果てていた。焼けた路面電車なども印象に強く残っている。

 結局、兄の消息は分からないまま。材木町辺りで骨を拾い集めた。「生きたくても、生きることのできなかった多くの人々、お兄ちゃんの分まで頑張ろうね」。心に残る母の言葉を交えてつづった。

 ほかにも、小中学校での被爆証言や、理事長を務めるNPO法人としての平和活動などを写真入りで紹介。タイトルの「宝物」は、子どもたちとの出会いを意味し、平和や命を大切に思う心をつないでくれる若い世代に希望を託して付けた。

 準備を進めていた今年1月には、心筋梗塞で倒れた。その後も小腸の病気や狭心症に襲われたが、入院先で執筆や資料集めを続け、1年がかりで完成にこぎ着けた。佐藤さんは「戦争は愚かで核は恐ろしい。未来を担う子どもたちが今の幸せを壊さないため、どうすればいいのか、考えるきっかけにしてほしい」と話している。

 22~25日には、原画展を中区袋町の市まちづくり市民交流プラザで開く。毎日先着20人に絵本を贈る予定。

(2013年10月14日朝刊掲載)

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