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連載・特集

緑地帯 川野祐二 エリザベト音大と歩んで④

 大学3号館にはグレゴリオ聖歌の楽譜をデザインしたガラス窓があり、大学の自慢の一つだ。窓の奥の壁面は、司祭の祭服の色を各階に使い(赤、白、紫、黒、緑、ばら色)、夜間LED照明時は色鮮やかに輝く。この特徴あるデザインに対して「ひろしま建築文化賞大賞」などを受賞している。

 本学は創立以来、西洋音楽の源泉である単旋律のラテン語聖歌=グレゴリオ聖歌を必修科目としている。3号館は、初期の記譜法であるネウマ譜のグレゴリオ聖歌を、複層ガラスの内側に焼き付けてある。音符は四角く、譜線は5本ではなく4本の楽譜である。卒業生はこれを見て、ネウマ譜を必死に覚えたほろ苦い記憶がよみがえるらしい。

 ゴーセンス神父はグレゴリオ聖歌研究と同様、日本と東洋の宗教音楽研究にも注力した。カトリック教会の大変革をもたらした1962から65年にかけて開催された第二バチカン公会議の時期であった。聖歌集改訂に共に携わった作曲家高田三郎氏によれば、日本語の聖歌は日本の旋律によって書かれるべきだ、とゴーセンス神父は強く主張したそうだ。

 グレゴリオ聖歌の授業は、国内外で名高い水嶋良雄先生が長年担当した。ガラス窓のネウマ譜も先生の著作からである。先生の後継教員たちも、グレゴリオ聖歌をしっかりと学生に伝えてきた。

 本学は2015年より、毎年1作品、著名な作曲家にラテン語の宗教合唱曲の作曲を委嘱している。カトリックの音大として、宗教合唱曲を新たに世に出し、演奏することは、建学の精神・教育理念の実現と同時に教会への貢献だと考える。100年で100曲を目指したい。(エリザベト音楽大理事長・学長=広島県府中町)

(2022年2月24日朝刊掲載)

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