×

社説・コラム

天風録 『「裸の王様」をいさめるのは…』

 大国の指導者に対して失礼は承知の上で「裸の王様」の称号を贈りたくなる。隣国に戦争を仕掛けたロシアのプーチン大統領は「ウクライナが住民を虐殺している」「だから非ナチス化する」と言いたい放題だ。いさめる部下がいないのだろう▲なのに米国のトランプ前大統領ときたら「彼は賢い」と褒めそやすものだから始末に困る。バイデン政権批判が目的の冗談らしいが、この人がもし現職だったら…。便乗してメキシコに侵攻しようとは案外、本気かも▲ウクライナの徹底抗戦が想定外だったのか、米欧日の経済制裁が気に入らないのか、プーチン氏の発言はエスカレートする一方。おとといは核兵器部隊に特別警戒態勢を命じた。ロシア本土が攻撃されれば核で反撃するぞとの脅しらしい▲裸の王様であっても核兵器を身にまとえば周囲は服従してくれる。そんな悪魔の兵器が幅を利かす世の中でいいはずがない。核共有を日本でも議論しようとの元首相の提案に、きのう岸田文雄首相はきっぱりと拒んだ▲王様にその真実の姿を告げるのは、戦火に悲鳴を上げるウクライナの子どもたちか、反戦デモを続けるロシアの市民たちか。今こそ被爆者の声も伝えたい。

(2022年3月1日朝刊掲載)

年別アーカイブ