×

連載・特集

緑地帯 川野祐二 エリザベト音大と歩んで⑦

 私が勤め始めた1980年代半ばには、本学には8人のイエズス会外国人教員がいた。国籍はスペイン、ドイツ、ベルギー、イタリア、アメリカで、国際的雰囲気があった。現在は1人である。

 その代わりに留学生が増えた。中国、韓国、フィリピンなどアジアからが多い。今は新型コロナウイルスの流行で、入学試験に合格している留学生が2年近く入国できないでいる。

 日常的な異文化交流は学生を成長させる。学生はインドネシア、タイ、東ティモールの貧しい地域に出かけ、クラシック音楽を生で聴いた経験のない人々に演奏を届けるサービス・ラーニングを行っている。日本と大きく異なる生活環境、演奏の場であるが、自分たちの音楽が人々にしっかり力強く伝わる体験を経て、他者のための音楽家の意味を痛感する。また外国語学習の重要性に気付くのは副産物か。

 2020年3月に、タイ国内2カ所での慈善演奏会が決まり、チケットも販売済みであったが、新型コロナが流行(はや)り始めて、やむなく中止となった。それ以来学生の海外派遣ができないのは残念だが、捲土(けんど)重来を期している。

 敗戦後、欧米各国から宣教師が数多くの学校に派遣され、教育水準および教育環境の向上に貢献した。本学の学生・教職員をアジア各地に派遣する、学内の演奏会収益を送金する等は、これまで受けたご恩のお返しだと考えている。本学の行動標語は「音楽をとおして 私が変わり 世界を良くする人になる」である。(エリザベト音楽大理事長・学長=広島県府中町)

(2022年3月1日朝刊掲載)

年別アーカイブ