×

ニュース

岩国基地 動き活発に ウクライナ侵攻 米中も争い先鋭化 台湾念頭に訓練 騒音増

 ロシアがウクライナに侵攻し、台湾に圧力をかけ続ける中国と米国のせめぎ合いが先鋭化する中、極東最大級の航空基地である米軍岩国基地(岩国市)の動きが活発化している。所属機は台湾から遠くない海域で訓練を重ね、基地周辺の騒音も増えている。専門家は「今後も岩国基地の役割は大きくなる」と指摘している。(有岡英俊)

 2月に入り、模擬弾を取り付けたとみられる艦載機のFA18スーパーホーネット戦闘攻撃機が頻繁に岩国基地を離陸した。海上保安庁の情報などによると、四国沖で爆撃訓練をしているもようだ。1月下旬から2月上旬には、基地所属のステルス戦闘機F35Bの2機が米軍嘉手納基地(沖縄県)に飛び、近海で実弾を積んで訓練した。

 ウクライナ情勢の緊張が高まる中、米海軍と海上自衛隊は1月中旬以降、沖縄海域で訓練を強めていた。1月17~22日には、カール・ビンソンとエーブラハム・リンカーンの原子力空母2隻を中心に11隻が参加した。この海域に2空母打撃群が集まるのは異例とされる。岩国基地にも寄港した米海軍の強襲揚陸艦アメリカも加わった。

 中国軍機は台湾の防空識別圏に侵入を繰り返し、台湾海峡を巡る緊張が高まっている。

 軍事評論家の稲垣治氏は「ウクライナの動向を中国は最重要視している。日米は中国が将来、台湾への軍事活動を活発化させないか警戒している」と分析する。元自衛隊陸将で国際大(新潟県)の山口昇教授(安全保障)は「米国は台湾の周辺海域へ多くの艦船や軍機を送り込み、インド太平洋地域で中国への抑止力を示している。必然的に岩国基地の役割は増す」と指摘する。

 一方、基地周辺は騒音も増えている。市内5カ所の測定器のうち、基地北側の川口町では昨年11月~今年1月に月1058~1149回と、2010年5月に滑走路が沖合に移される前の水準に戻った。1月の騒音への苦情も前年より110件増の518件と過去15年間の同月で最多だった。

 市民団体「瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク」の久米慶典顧問は「ウクライナのように改めて『戦争』は起こる。中国への対応を誤れば、基地にもミサイルが飛んでくることも否定できない。基地のある町の市民として、動向を注視しなければいけない」と表情を引き締めた。

(2022年3月1日朝刊掲載)

年別アーカイブ