×

社説・コラム

天風録 『スポーツと戦争』

 走り回ったりダンスをしたり、時にはユニホームを脱いだり。ゴールを決めるやサッカー選手は喜びを爆発させる。派手なパフォーマンスも試合の華。だが先日、イタリア・セリエAでゴールを決めたミランチュク選手には笑顔もなかった▲W杯出場の夢を絶たれた失望が理由だろうか。自身も一員である母国ロシアの代表チームは出場停止となった。ウクライナ侵攻を受け、国際サッカー連盟が決定した。ロシアとは試合をしないという国も相次いでいる▲もう一つ。イタリアの同じチームにいるウクライナ代表の心情を思うと喜べないのだろう。先週、ゴール後に「ウクライナに戦争は要らない」と書いたシャツを示した選手だ。国が砲火を交えても2人の間には通じるものがある▲スポーツ界で侵攻への非難の声が高まる。バドミントン、水泳、空手…。ロシアで開催予定だった国際大会が次々に中止されている。あさって開幕の北京冬季パラリンピックでもロシア勢の参加には異議が唱えられる▲ウクライナは冬のパラスポーツ強豪国。だが移動が困難で、北京入りできていない。選手は純粋に競い合いたいだろうに。スポーツの喜びまで奪ったロシア大統領が憎い。

(2022年3月2日朝刊掲載)

年別アーカイブ