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社説・コラム

天風録 『ウクライナの自由』

 国際法違反の一線を越えると、何でもありになってしまうのか。核兵器をちらつかせるだけでなく、ロシアは軍事施設以外にまで砲口を向けた。ウクライナ第2の都市ハリコフで、州庁舎や住宅地を狙い撃ちに▲首都キエフでは、通信網の拠点であるテレビ塔にミサイルが命中、炎と黒煙が上がった。侵攻の現状発信を止めるのが、ロシアの狙いとみられている。ウクライナの抵抗が予想以上に激しく、思惑通りに攻め込めない。そんな焦りの証しなのだろう▲ウクライナにとって、国際社会へのアピールが生命線のようだ。例えば欧州議会でビデオ演説したゼレンスキー大統領。ハリコフの州庁舎は「自由」広場に立つと述べ、自由が攻撃されていると強調した▲国連総会では大使が、ロシア兵のスマートフォンに残されていたメッセージを読んだ。「本当の戦争」「怖いよ」。死の直前、母親と交わしたそうだ。ロシアは「虚偽だ」と否定している。真偽はいずれ分かるだろう▲自由広場はソ連からの独立後、名付けられたという。自由のために闘っている、われわれを見放さないで―。欧州議会でゼレンスキー氏は訴えた。支援の呼び掛けに私たちも応えなければ。

(2022年3月3日朝刊掲載)

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