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原爆症認定 8月までに基準見直し 政府表明

■記者 岡田浩平

 原爆症認定集団訴訟で政府は9日、国の新基準で認定されていない原告9人を新たに原爆症と認めた東京高裁判決を受け入れ、上告を見送る方針を表明した。政府は今後、8月の広島、長崎の原爆の日までに結論を出すことを念頭に、認定基準の見直しとほかの未認定の原告の救済策について検討を急ぐ。原告側の求める「全員救済」を含む訴訟の一括解決は、最終的に麻生太郎首相が政治判断する。

 原告側が積極認定に加えるよう求める肝機能障害、甲状腺機能低下症を原爆症と認めた判決が大阪高裁に加え東京高裁でも確定する。厚生労働省は昨年10月から二つの病気の認定について被爆者医療分科会で検討しており、司法判断も踏まえ今月22日の会合で取りまとめに入る。

 原告団は訴訟の一括解決へ、積極認定の対象から外れる病気を前向きに認めるよう要望。なお認定されない原告について何らかの救済を求めている。政府高官は、8月の原爆の日までに首相の決断で全体の解決方針を打ち出す考えを示している。

 ただ政府内部には「裁判で負けた原告を救うのは国民の理解が得られるのか」などとする慎重論も根強い。与党の被爆者対策プロジェクトチーム(PT)が原告側の要望にほぼ添う「勧告的意見」を政府に提出しているが、解決への道筋は不透明だ。

 河村建夫官房長官はこの日の定例会見で訴訟の解決について「地裁を含めこれまでの判決を精査し、認定基準との整合性をどうとるか本格検討したい。全面解決にどういう方法があるかできるだけ早く結論を導き出す努力をしたい」と述べた。

 東京高裁判決は、昨年4月に国が取り入れた基準で認定されていない原告10人のうち9人を原爆症と認めた。厚労省は「法令の解釈など最高裁で争う理由はない」と説明している。原告側は敗訴した1人について上告する方針。

一括救済に首相は慎重

 麻生太郎首相は9日夜、原爆症認定集団訴訟で原告側が求める全員救済について「原爆症の場合は一人一人の内容がだいぶ違うので、一括(救済)というのはなかなか法的には難しいと思う」と述べた。官邸で記者団の質問に答えた。

 全員救済をめぐり、舛添要一厚生労働相は「最終的には首相の決断」との認識を示している。首相は法律的な困難さを指摘することで、慎重姿勢を示したとみられる。

(2009年6月10日朝刊掲載)


原爆症訴訟 原告団、厚労相に解決要望

■記者 岡田浩平

 原爆症認定集団訴訟の原告団が9日、国会内で舛添要一厚生労働相と面会した。

 原告側は被爆者たち14人が出席。西本治子さん(71)=東京都三鷹市=は長崎での被爆体験を語り「生きているうちに救われる認定制度に」などと訴えた。

 舛添氏は「司法判断は政治家として重く受け止める」と強調。解決については原告の要望に加え医師ら専門家の意見も踏まえて麻生太郎首相の判断を仰ぐ、とし「国民に支持してもらういい方向で一日も早く解決したい」と述べた。

 面会後、山本英典全国原告団長(76)は「大臣の誠意は感じるが、全員救済、一括解決はまだまだだと感じた」と話していた。

(2009年6月10日朝刊掲載)

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