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「カウラ事件」語り継ぐ 豪の監督 映画化へ福山で取材

 オーストラリア人の映画監督マックス・マニックスさん(48)が、第2次世界大戦中に同国のカウラ収容所で日本人捕虜が集団脱走を図った「カウラ事件」の映画化を進めている。捕虜にいたとされる広島県福山市の陸軍歩兵第41連隊について知るため先月末、初めて同市を訪れた。(久保友美恵)

 映画の題名は「イエローアース」。同収容所の衣食住の環境は悪くなかったにもかかわらず、死を覚悟して脱走を図った日本兵の精神性や戦下の壮絶な状況に迫る。2014年から日豪で撮影し、15年に各国で公開する。

 26歳で初来日し、日本人の価値観や文化に興味を持ったというマニックスさん。脚本を初めて手掛けた日本人家族の映画「トウキョウソナタ」は2008年、カンヌ映画祭で「ある視点部門審査員賞」を受賞した。

 事件については小中高の教科書で学んだが「概要だけの知識にとどまっていた」という。事件への関心が膨らみ、2年前から史実を調べて映画の構想を練ってきた。

 福山市では、41連隊史を調べている大田祐介市議の案内で兵営跡地(現緑町公園)や今も残る兵営の西門、将校集会所の門柱を見て回った。大田市議が「旧跡の意味を知る市民は多くない」と説明すると「残念なこと。福山からも多くの若者が戦地に行った。つらい歴史だがちゃんと伝えていかないと」と話した。

 8月には事件を目撃した元日本兵の立花誠一郎さん(92)=瀬戸内市=を訪ね、体験を聞いた。マニックスさんは「なぜ死を選んだのか。日本兵の価値観やそれをつくった時代について考えたい」と話している。

カウラ事件
 1944年8月5日、カウラの捕虜収容所で日本兵が集団脱走を図り、射殺などにより231人が死亡した。脱走に失敗し、自殺した人も多くいた。当時、捕虜になったことを恥と考え、名前や階級を偽っていたため、犠牲者の詳細はいまだ不明。

(2013年10月17日朝刊掲載)

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