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戦争による攻撃 想定外 島根原発などのテロ対策 露、ウクライナ原発砲撃

 ロシア軍によるウクライナ南部のザポロジエ原発への攻撃は、テロなど原発に対する意図的な攻撃のリスクをあらためて浮き彫りにした。国はテロに備える特定重大事故等対処施設(特重施設)の設置を原発に義務付け、電力会社が整備を進めるが、戦争による攻撃は前提としていない。

 中国電力が2号機の再稼働を目指す島根原発(松江市鹿島町)。同社は「常にテロ行為を想定し、警察庁や海上保安庁と連携して警戒している」と説明する。万が一、武力攻撃を受けた場合は、国民保護法に基づいて作成した国民保護業務計画に従って対応する。

 だが特重施設は、今回のロシア軍の攻撃のような戦争状態は考慮していない。原子力規制庁は「特重施設の具体的な想定は言えないが、少なくとも他国から攻撃を受けるようなことは想定していない」と説明する。

 原発事業に関わる商社関係者は「日本の原発は海外に比べ、悪意のある攻撃や侵入に対して弱い。ただ、民間企業にとっての限界もある。厳重に守り過ぎるのも地域住民に不安を与えかねない」と指摘する。

 整備を進めている特重施設は、意図的な大型航空機の衝突などによる原子炉建物の損壊を想定。バックアップの電源設備やポンプ、緊急時制御室などを備え、原子炉を冷やせるようにする。建物は頑丈にするか、原子炉から距離を確保するなどしてリスクを減らす。可搬型のポンプや送水車も周辺に配置する。

 原発へのテロ攻撃の懸念は2001年の米中枢同時テロで高まった。国は13年に施行した原発の新規制基準で、特重施設の設置を義務付けた。

 中電は15年2月、島根原発で特重施設の敷地造成に着手した。16年7月、設置許可に関する申請書を原子力規制委員会に提出。22年2月末、耐震設計や津波対策の方針など新たな内容を反映させた補正書を提出した。完成時期は明らかにしていない。

 原子力規制庁によると、廃炉決定済みを除く国内の原発36基のうち九州電力、関西電力、四国電力の5基で特重施設が完成し、運用を始めている。(榎本直樹)

(2022年3月5日朝刊掲載)

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