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きのこ雲撮影カメラを展示 7日から広島平和祈念館 松重三男さん使用

 1945年8月6日の原爆投下直後、爆心地の北東約7キロの安佐郡古市町(現広島市安佐南区)からきのこ雲を撮影したカメラが、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(中区)で7日に始まる企画展で展示される。同館は「被爆の実態を写した数少ないカメラの実物に接し、被害をよりリアルに感じてほしい」としている。

 縦横約25センチの木製の暗箱で、蛇腹を伸ばしてレンズを取り付ける組み立て式。広島県職員でレントゲン技師だった松重三男さん(89年に78歳で死去)が撮影に使用し、78年に原爆資料館(中区)に寄贈した。同僚を通じて写真店から借りていたが、同僚が被爆死し、本来の持ち主は不明という。

 病気療養のため自宅にいた松重さんは、閃光(せんこう)と爆風に続き、広島上空に「オレンジ色の玉」が上昇するのを目撃。カメラを急いで持ち出し、さく裂直後から正午ごろにかけ、きのこ雲や市内上空を覆う煙など3枚を撮った。

 負傷者を乗せ北に向かうトラックを自宅から撮った1枚も残る。「撮影するにしのびなかった。ただ一度だけ、記録にとどめておこうと思ってシャッターを切った」との手記を残した。

 企画展「震えるまなざし 撮影者たちが残したことば」は、被爆当日の市民の姿を捉えた元中国新聞社カメラマンの故松重美人さんたち、自らも被爆しながら記録写真を残した撮影者を紹介。それぞれの被爆状況や撮影の葛藤を紹介する映像作品のほか、市内外から撮ったきのこ雲の写真などの解説パネルもある。12月29日までで無料。同館は「鋭い観察眼で残した写真や手記に触れ、被爆の実態を知ってほしい」としている。(明知隼二)

(2022年3月5日朝刊掲載)

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