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社説・コラム

『書評』 郷土の本 戦前戦後の広島 写真で生き生き

 広島県内各地の戦前・戦後の写真や絵はがきを集めた「ふるさと広島 今昔散歩」が刊行されている。地域史研究家の生田誠さん(64)=東京=が、約20年前から集めている資料を掲載。「広島駅」「旅館と料亭」「海岸風景」といった67のテーマに分け、広島や呉、尾道などの風景を取り上げる。

 戦前とみられる広島駅を撮った写真には、コンクリート造りの駅舎が写る。駅前には人力車や車が並び、当時の人々の暮らしを想像させる。かつて広島市中心部にあった洋館風の映画館「泰平館」、西日本有数の大劇場だった「新天座」を捉えた一枚は往時のにぎわいを伝える。

 空襲で焼失する前の福山城天守閣や、旧松永町(現福山市)に広がる塩田、大正期の三原の市街地などを収めた絵はがきもある。明治後期の広島市街の地図や、戦前の旧竹原町の鳥瞰(ちょうかん)図のほか、各地の歴史をたどる文章も掲載する。

 本書はフォト・パブリッシング(東京)の刊行で、東京の昔懐かしい風景を紹介した前2作に続くシリーズ3作目に当たる。生田さんは、広島には独自の歴史を持つ土地が多いと指摘。「世代ごとに、懐かしさや驚きを感じてもらえるはず。地元を再発見してほしい」と話している。1980円。(福田彩乃)

(2022年3月6日朝刊掲載)

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