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昭和初期の業界紙寄贈 「逓信萬報」被爆前の世相 生き生き 県立文書館に沼田さん あすから閲覧可能

 昭和初期に広島市内で発行されていた郵政業界紙「逓信萬報(ていしんまんぽう)」約200部を、沼田良平さん(69)=東区=が県立文書館(中区)へ寄贈した。被爆前の世相が生き生きと記録された貴重な郷土資料で、7日から館内で閲覧できる。(桑島美帆)

 逓信萬報は、1929年3月に沼田さんの祖父秀玉さん(56年に70歳で死去)が創刊したタブロイド紙。太平洋戦争中の報道統制を受けて42年6月に廃刊するまで、通信行政、地域経済、商店街の話題など多彩な記事を掲載した。

 今回寄贈したのは、30~34年と39~42年の発行分。39年5月21日付の3面では、大型乗用車を改造した「動く郵便局」が広島逓信局に1台配備され「皆さまの前にデビューすることとなった」と報告。8月11日付は、広島貯金支局の職員と、広島赤十字病院の医師たちが野球の交歓試合を開いた熱気を伝える。徐々に戦時色が濃くなり「貯めよう!勝たう!」と貯蓄を呼び掛ける国策広告が目立つようになる。

 沼田さんによると、被爆アオギリの下で証言活動を続けたことで知られる叔母、故沼田鈴子さんの遺品を数年前に整理した際、新聞の束を見つけた。「将来にわたり処分されることがないように」と2月末に文書館へ届けた。

 西向宏介主任研究員(56)は「県史や市史には記録されていない埋もれた歴史が見つかる可能性がある。研究に限らず、幅広い分野で活用が期待される」と話す。新年度から複製版の制作とデジタル化も進める。

(2022年3月6日朝刊掲載)

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