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社説・コラム

天風録 『キエフに寄付』

 ゆっくり京都でも巡りたい―。コロナ収束後の旅を思い描く人がいるだろう。外国人にも人気のその京都市は、半世紀も前から海外の古都と姉妹都市縁組を結んでいる。ウクライナの首都キエフである▲歴史ある町並みを誇り、バレエや音楽も盛んな芸術の都。訪れたい人は多いようで今、宿泊の予約が相次いでいる。しかし侵攻してきたロシア軍が美しい古都を包囲、破壊しつつある。実際には観光も宿泊もできない▲それでも民泊の仲介サイトを通して寄せられる予約と入金は、家主への寄付が目的だ。市民に素早く送金し、助ける手段として取り組まれている。侵略から逃れる人々には心強い味方だろう。さまざまな形での支援の輪が広がっている▲豪華な返礼品で寄付を集めるあの都市も動いた。大阪府泉佐野市が全国で初めてふるさと納税を活用したウクライナ支援を始めた。この寄付に返礼品はないものの既に1300人以上から約4700万円が寄せられた▲撤退や締め出しなど、国際的な金融機関や企業はロシア離れを進めている。武器を手に取らなくても、私たちにできることはある。暴挙を非難し、ウクライナの人々を救うため、知恵と善意を集めよう。

(2022年3月13日朝刊掲載)

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