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核戦争が現実味 若い世代に恐怖 プーチン氏言動が引き金 平和団体 心情に向き合う

 ロシアのウクライナ侵攻が核戦争につながるのではないか―。核兵器を使う可能性をちらつかすプーチン大統領の言動を引き金に、若い世代に不安が広がっている。核超大国の米国と旧ソ連がにらみ合った冷戦を経験しておらず、初めて現実の恐怖として捉えている。平和団体は若者たちの心情に向き合いつつ、核兵器廃絶の訴えを強めている。(宮野史康)

 東広島市の団体職員、川崎梨乃さん(30)は、仕事先でも家庭でもウクライナ情勢が頭を離れない。広島の被爆者の祖父の思いを継ぎ、核兵器廃絶を願ってきたが「核兵器が使われたら、ヒロシマの思いが踏みにじられる」と無力感に包まれる。長男(1)の将来を思うと胸騒ぎも感じる。

 「核戦争が急に現実味を帯びてきた」と話すのは、東京都の会社員男性(33)。核攻撃を受けたときの対処法をインターネットで検索した。広島市の会社員女性(28)も欧州にいる友人が心配で夜遅くまで頭がさえ、スマートフォンでニュースを追ってしまうという。

 プーチン大統領は2月24日の演説で「ロシアは世界で最も強力な核保有国の一つだ」と強調。28日には、核兵器運用部隊を戦闘警戒態勢にしたとしている。

 こうした動きを受け、平和活動に取り組むNPO法人のANT―Hiroshima(広島市中区)には核戦争の恐怖を訴える電話がかかってくるようになった。これまでに県内外の男女6人に対応。核兵器の被害を解説する本を送ったり、反戦を訴える催しへの参加を提案したりしたという。

 渡部朋子理事長(68)は「核兵器は使われないと思い込んでいた人が自分ごとと捉えだした。冷戦時代を知らない世代にとっては初めての経験だろう」とみる。

 一方で、米国との核兵器共有の議論を求める安倍晋三元首相(山口4区)の発言が注目を集め、日本の核武装を求める声がネット上などで上がっているのを懸念。「核兵器の使用を防ぐ手だては廃絶しかない」と、被爆地から訴え続ける重要性を説く。

 非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))のベアトリス・フィン事務局長も今月1日、自身の写真共有アプリ「インスタグラム」を更新し、「不安を感じるのはごく自然なこと」と発信した。ICANが核戦争を防ぐために取り組んでいると強調。破滅的な想像にばかりとらわれないよう呼び掛け、パニックを防ぐ心の保ち方を紹介している。

(2022年3月15日朝刊掲載)

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