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島根原発稼働 発言権求める動き加速 周辺5市 鳥取県 明文化など訴え

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)30キロ圏の自治体のうち、立地する島根県と松江市を除く鳥取県と両県5市が原発稼働への発言権を求める動きを強めている。再稼働手続きの開始を控え「事故の危険があるのに重要な判断に意見できない」と危機感を訴える。中電と島根県の対応次第では、立地自治体以外に権限が広がり「原発の地元」が拡大する可能性もある。(樋口浩二)

 17日、県庁に溝口善兵衛知事を訪ねた安来市の近藤宏樹市長は「周辺自治体への県の対応が見えない」と切り出した。稼働判断に出雲、雲南市を含む3市の意見を反映するよう明文化を迫った。

 3市と米子、境港市、鳥取県は福島第1原発事故を受け、事故に備える原子力災害対策重点区域となった。だが、県と松江市が持つ稼働を左右する権限はない。両自治体と同等の原子力安全協定を中電と結んでいないためだ。

 例えば、稼働の前提となる国の安全審査の事前了解権だ。「福島の事故では30キロ圏に被害が及んだ。住民に説明がつかない」。近藤市長は立地自治体並みの協定締結を訴える。

 島根県内の周辺3市は再稼働手続き開始を見据え、5月から発言権獲得に向け協議を本格化した。「『このままでは存在感が薄れる』と一致した」。ある市の幹部は明かす。

 3市は18日、昨年8月に続き中電に締結を求めたが保留された。「現実的な策」(出雲市の長岡秀人市長)と県に求めたのが意見反映の明文化だった。近藤市長と雲南市の速水雄一市長を含めた3市長は、了承した溝口知事の姿勢を歓迎した。近く、米子、境港市と鳥取県も要望に動く構えだ。

 一方、中電は周辺5市と鳥取県の要求を拒み続けている。「運命をともにしてきた長い歴史がある」。清水希茂副社長は18日語り、重要な権限は島根県と松江市だけに限りたいとの配慮をにじませた。

 5市と鳥取県は再稼働への手続きの前に中電から説明を求める方針だ。原発立地に伴う交付金を受け取っていない点で島根県、松江市と立場が異なる。「市民の生命、財産を守る」(近藤市長)という声もあり、中電には協定締結の有無にかかわらず、これまで以上の説明責任が求められている。

原子力安全協定
 全国の電力会社と原発の立地自治体が結ぶ紳士協定。原発の重要な計画変更への事前了解や立ち入り調査、原子炉の停止要求など自治体側が行使できる権限を定める。福島第1原発事故後、それらすべての権限を含む協定が立地していない自治体と交わされた事例はない。

(2013年10月20日朝刊掲載)

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