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お好み焼き店に原材料高騰の波 小麦・食用油・ガス代… 「踏ん張りたい」「値上げ許して」

 広島名物のお好み焼き店が、小麦や食用油などの原材料の高騰に苦しんでいる。鉄板を熱するガス代も上がり、経営を直撃。お好み焼きを値上げする動きも出ている。ロシアのウクライナ侵攻後、原油価格はさらに上昇しており、広島市内の店主たちは「先が見通せない」と危機感を募らせている。(政綱宜規)

 佐伯区の「ぼう。」は今月、お好み焼きを一律30円値上げした。「肉玉そば」は830円になった。秦信宏オーナーは「高騰していないものを探す方が難しい」とこぼす。半年前に比べ、食用油の一種「白絞(しらしめ)油」は約2倍に急騰。小麦粉が1割強、マヨネーズや持ち帰り用の容器が約2割上がった。

 秦オーナーによると、お好み焼きの原価は2~3割上昇した。「肉玉そばで麺を2玉にしても千円を超えないように抑えた。正直これでもつらい」と明かす。

 広島県海田町と南区に店がある「寄り家。」も4月からお好み焼きを30円値上げし、トッピングも最大50円上げる。海田店の林田昌頼店長は「ガス代だけで月1万円増えた。値上げは必要だが、お客さんが離れないか怖い」と悩む。

 農林水産省は9日、国が輸入した小麦の主要5銘柄の2022年4月期(4~9月)の平均価格を前期比17・3%上げると発表。小麦などを扱う市内の卸会社は「中国の活発な経済活動などで穀物や油の需要が伸びているのに、小麦産地であるウクライナへのロシア軍侵攻や新型コロナウイルス禍で供給は細っている。値上げしないと店も、小麦粉や麺のメーカーもつぶれる」と指摘する。

 耐える店にも苦労がにじむ。南区の「ルーキー」は19年の開店以降、肉玉そばを680円で出し続ける。日開(ひがい)留美オーナーは「コロナ禍でも通ってくれた常連への恩返し。でも、いつまで持つか分からない」と話す。23店が入るお好み村(中区)の豊田典正理事長は「県外から来てくれる人も多い。何とか踏ん張りたい」と、全店で据え置く方針を示す。

 市内の配達専門店は、新たに最低注文価格を設ける予定。オーナーは「材料費は上がっても、お好み焼きの安価なイメージは根付いたまま。地域の味を守るため、ある程度の値上げは許してほしい」と話す。

(2022年3月16日朝刊掲載)

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