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医学生 戦禍の避難民ケア ウクライナ国境の町で広島出身椿原さん 「関心持って」SNS発信も

 広島市西区出身で、ハンガリー在住の医学生椿原弘將(こうき)さん(26)が、ウクライナ国境の町で、ロシア軍の侵攻から逃れて来た人たちの医療支援に取り組んでいる。ボランティアとして活動する傍ら、会員制交流サイト(SNS)での情報発信にも力を入れる。遠く離れた日本でも「ウクライナの人々が置かれた状況に、関心を持ち続けてほしい」と願う。(湯浅梨奈)

 ハンガリー南部セゲド市にある国立セゲド大医学部4年の椿原さんは、赤十字国際委員会(ICRC)が募ったボランティアに、大学の連休を利用して参加。医学生仲間5人とタクシーに乗り合い、6時間をかけて国境の町ザホニーに入った。子ども連れの女性が一時的に滞在する臨時施設や、首都ブダペスト行き列車の発着駅で、体調不良の人たちをケアしている。

 午後8時から翌午前8時まで、避難してきた人たちの血圧を測定し、問診票の記入をして、医師をサポートする。体調が悪そうな人には、すぐに声を掛けて医務室まで寄り添う。

 避難民の実情を国内外に広く知ってもらおうと、許可を得て、避難施設などで動画も撮影。写真共有アプリ「インスタグラム」のライブ配信機能やツイッターなどSNSを駆使して英語と日本語で発信している。

 椿原さんが撮った動画には、避難施設となった高校の教室にベッドが並ぶ様子や、大きな荷物と赤ちゃんを抱える母親たちの姿が映っている。

 避難してきた人のほとんどは女性と子ども。男性は戦うためウクライナ国内に残っているためだ。他人の子どもを預かって逃げている女性や独りで避難している10代の子どもも少なくない。「泣きながら座り込んでいる人もいる。みんな不安を抱え、顔色も悪い」と椿原さんは胸を痛める。

 祖父(77)が被爆者だという椿原さんは、広島に生まれ育ち、平和に関心を持ち続けてきた。広島学院中・高時代には、原爆資料館(中区)主催の「中・高校生ピースクラブ」に参加。核保有国を含む世界の首脳に折り鶴を届けるなど平和活動に力を注いだ。そんな経験から「人の役に立ちたい」と、国際的に活動する医師を志し、高校卒業後、ハンガリーに渡った。

 医学生として目の当たりにしたウクライナからの避難民の現実に、「故郷を奪われ、知らない国へ逃げてきた人々の姿には言葉にできない悲しさがある」と椿原さん。

 そんな現実をネットを通じて古里に伝えながら「日本からできることは限られているかもしれないが、何より心に留め続けてほしい。それが継続的支援の土台になる」と訴えている。

(2022年3月16日朝刊掲載)

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