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幹1本の被爆樹木 広島 8割、爆心方向に傾く 筑波大など調査

 原爆の閃光(せんこう)を浴びた広島市の被爆樹木のうち、幹が1本しかない樹木の8割近くが爆心地の方向に傾いていることが、筑波大や広島の樹木医の調査で分かった。爆心地側の幹の細胞が熱線などで傷つき、成長が遅れたことが原因ではないかとみている。

 調べたのは、筑波大の鈴木雅和教授(61)=緑地学、同大大学院人間総合科学研究科2年の大脇なぎささん(24)、広島市西区の樹木医堀口力さん(68)の3人。

 鈴木教授らは9月、爆心地から約2キロ以内にある被爆樹木約170本のうち、幹が1本のクスノキやイチョウ、ツバキなど56本を選んで調査。原爆で地上部だけが焼失した5本と、被爆後移植された22本を除く29本を分析した。その結果、79%に当たる23本が爆心地方向に傾いていた。

 真っすぐ爆心地方向に傾いていた樹木(爆心地方向と傾いている方向との角度のずれは0度)が2本、ずれが1~15度の樹木は16本あった。最大でも角度のずれは29度だった。

 爆心地側の幹は放射線や熱線を浴びるなどで細胞が傷つき、成長が鈍化。影響の少なかった反対側の成長とのずれが累積し、徐々に曲がったと推測している。残り6本が爆心地方向に傾いていないのは、反対側で大きな火災が起きた▽土地が傾いている―などの原因が考えられる、という。

 鈴木教授は「被爆樹木は、爆心地の方向を無言で示し続け、生命力の強さと消えない傷の両方を伝えている。今後、生い立ちや内部の様子などを一本一本さらに調べたい」としている。(増田咲子)

広島で23日に調査結果発表

 調査の結果は、国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所が23日午後6時から原爆資料館東館(中区)地下で開く公開セッションで発表される。

 鈴木教授と堀口さんに加え、市民グループ「緑の遺産ヒロシマ」(中区)共同創設者のナスリーン・アジミさん、建築家の錦織亮雄さんの4人が、被爆樹木の意義などについて話し合う。無料だが、事前申し込みが必要。Tel082(511)2424。電子メールhiroshima@unitar.org

被爆樹木
 広島への原爆投下前からあり、爆心地から約2キロ以内で被爆した樹木。市が1996年度から、証言や樹木医による確認などを基に、一般の人が出入りできない個人宅にある樹木を除いて登録を始めた。現在は、公園や寺など55カ所にイチョウやツバキ、エノキなど約30種類、約170本ある。

(2013年10月21日朝刊掲載)

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