×

ニュース

核共有「なじまぬ」 自民調査会 提言に盛り込まず

 自民党の安全保障調査会は16日、党本部で勉強会を開き、日本の領土内に米国の核兵器を置き、共同運用する核共有政策について「日本ではなじまない」と結論付けた。非核三原則の見直しも否定した。年内を予定する外交・安全保障の基本方針「国家安全保障戦略」の改定に向けた政府への提言でも、核共有は盛り込まない流れとなった。

 核超大国ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、安倍晋三元首相(山口4区)らが核共有を提起。岸田文雄首相(広島1区)は非核三原則の「持ち込ませず」に抵触するとして政府内で検討しないと繰り返す一方、党内議論を容認したことで勉強会が開かれた。

 調査会長の小野寺五典元防衛相が冒頭、「さまざまな意見を今後の安保政策に取り入れたい」とあいさつし、非公開で話し合った。

 安保政策に詳しい岩間陽子政策研究大学院大教授と神保謙慶応大教授が講演した。米国の核兵器を北大西洋条約機構(NATO)加盟国で共有する政策は、冷戦下で西欧が東欧との軍事力の均衡を保つためだったと解説し、「アジアでは当てはまらない」と断言。非核三原則に関しては「核の配備先が分かれば攻撃対象になる。見直しは実益がない」と指摘したという。

 複数の出席者によると、核共有や非核三原則の見直しを求める意見は皆無に等しく、調査会としても今後議論しない方向でまとまったという。自民党は、国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画という、いわゆる安保・国防関連3文書の年内改定に向けた政府への提言にも盛り込まないとみられる。

 勉強会では、米国が「核の傘」と通常戦力で日本など同盟国を守る意思を明らかにし、敵に攻撃を思いとどまらせる「拡大抑止」という仕組みに対しては異論は出なかった。岸田首相が14日の参院予算委員会で日米同盟の拡大抑止を「世界屈指」と強調していた。

 被爆地選出の首相とすれば意にかなった党内決着だが、核の傘を事実上肯定したことでライフワークとする「核兵器のない世界」との矛盾が浮き彫りとなった。(境信重、中川雅晴、山本庸平)

(2022年3月17日朝刊掲載)

年別アーカイブ