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カザフスタンの国立医科大 星氏が客員教授就任 現地での被曝研究評価

 旧ソ連時代に核実験が繰り返されたカザフスタンで約20年間、住民や土壌の放射線被曝(ひばく)を調査・研究してきた星正治広島大名誉教授(65)=放射線生物・物理学=が、同国セメイ(旧セミパラチンスク)市にあるセメイ国立医科大の客員教授になった。これまでの現地での研究実績が評価された。

 専用の研究室があり、1年に4カ月以上は滞在。学生への講義のほか、核実験による放射能汚染の実態解明や人体への影響調査などを続けていく。

 既に、セメイ市内にある理工系のシャカリム大、放射線医学環境研究所と共同で、れんがや土壌、歯などの被曝線量を調べることが決まっている。これまでのノウハウがあり、データが増えれば解明も進む上、人材育成への貢献も期待される。

 客員教授就任の証書は、8~9月に現地を訪れた時、トレバイ・ラヒプベコフ学長から手渡された。星さんは「内部被曝などにも注目しながら、核実験場周辺にある、さらに多くの村々の被曝線量調査を進めていきたい」と話している。

 星さんは昨年、広島市内の内科医師らと同医科大に招かれ、集中講義を初めて行った。3人で約90分の講義を4日間で計12回実施。核実験被曝者にも多い甲状腺の病気、大腸がんや乳がんの治療法に加え、放射線の基礎知識など幅広いテーマを取り上げた。

カザフスタンの被曝(ひばく)者
 カザフスタンにあった、旧ソ連最大のセミパラチンスク核実験場で1949~89年、核実験が450回以上も繰り返された。うち100回以上は空中や地上で実施され、放射性物質が拡散。周辺住民にがんの発病や異常出産が相次ぐなど、被害が深刻化した。今なお多くの人ががんや心臓病などに苦しんでいる。影響がある人は約150万人に上るという。

(2013年10月21日朝刊掲載)

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