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ウクライナ侵攻の悲惨な映像 子へどう対応? 心的外傷の恐れ 「守ってるよ」伝えて

背景 一緒に考えよう

 ロシア軍がウクライナに侵攻し、連日の報道で現地の悲惨な映像が流れている。「どうして戦争をするの」と疑問に思う子どもたちも多いだろう。親子で紛争のニュースを見たときの対応について専門家に考えを聞いた。(桜井邦彦)

 「紛争や戦争が話題になると、どこで暮らしていても、恐怖や悲しみ、怒り、不安といった感情が湧き起こります。子どもたちはなおさらです」。日本ユニセフ協会は今月3日、ウクライナ侵攻後にホームページで公表した文書で注意を呼び掛けた。

 「悲惨な映像を流しっぱなしにして、大人が何のケアもしないまま子どもを暴露させるのは危険」と広島大教職大学院の山崎茜講師(教育学)も問題点を挙げる。共感しやすい子はテレビ画面から得た追体験から恐怖や不安などが将来のトラウマ(心的外傷)として残ってしまう恐れがあるという。

 小学生や保育園児などの4児を育てる山崎さんも「私自身、大きい子には現実を教えるべきだと思うのですが、下の子に悲惨な映像を見せるのにはちゅうちょする」と打ち明ける。

 ただ、厳しい現実であっても覆い隠すのは良くないと指摘。「心地よいものに囲まれて過ごさせたいでしょうが、そうはいかないのが現実社会です」と話す。親が一緒に見て、子どもに安心感を与えるよう促す。「ウクライナで怖いことが起きているね、でも、あなたは私たちが守っているから大丈夫よ、そんなメッセージを伝える。幼児など小さい子であれば、抱っこしてあげてもいい」とアドバイスする。

 現実の戦争のように力で威圧して相手を従わそうとする行為の是非や争いの解決法について子どもと話し「しんどい時に乗り越える力を育んで」と呼び掛ける。

 また、広島大平和センターのファン・デル・ドゥース・ルリ准教授(記憶学)は「相手を傷つける戦争は良くないが、正義か悪か、良いか悪いかという単純な二者択一の発想は、憎悪を抱かせ報復の連鎖を生んでしまいかねない」と危惧。「子どもたちがプーチン大統領は悪者と言ったら、『どうしてそう思うの』と聞いてあげてください」と助言する。思考停止に陥らないよう歴史や背景を親子でしっかり考える機会にしてほしいと期待する。

 かつて、太平洋戦争では広島は原爆投下により多くの犠牲者が出た。人々は戦禍で命を失う痛みを経験している。「自分の受けた痛みを他の人に体験させてはいけないというヒロシマの精神が大切です。殴られたら殴り返す報復の連鎖は人類の滅亡につながってしまう」と述べる。

 ウクライナの問題を見つめ「力による解決でなく、話し合いで問題を解決できる子どもを育てたい」と話す。

(2022年3月18日朝刊掲載)

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