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図書館移転の予算成立 広島市議会 丁寧な検討要求

 広島市中区にある中央図書館などをJR広島駅前の商業施設「エールエールA館」(南区)に移す市の計画で、市議会(定数54、欠員6)は17日、本会議を開き、関連費用を含む2022年度一般会計当初予算案を可決した。市民から賛否の声が上がっていた計画は、前進する方向となった。一方、付帯決議案を全会一致で可決し、現地建て替えも含めた丁寧な検討を市に求めた。(余村泰樹)

 市の予算原案の採決は、議長と欠席議員1人、退席した市政改革ネットワークの2人を除く44人が参加。共産党の5人を除く39人が賛成した。

 付帯決議案は市議会全8会派(二つは1人会派)のうち公明党など6会派が提出。市民や有識者の意見を聞いて整備方針を作ること▽現地建て替え、図書館がある中央公園内の移転、A館への移転の三つの詳細な比較―などを求めている。

 当初予算案の原案の採決に先立ち、市政改革ネットワークが提出した、移転関連予算の大半を削る修正案を諮った。採決には46人が参加。記名投票で、賛成21人、反対25人の反対多数で否決された。

【解説】市は理解得られる説明を

 市民の声を背景に広島市議会内で賛否が拮抗(きっこう)していた中央図書館などの移転問題は、市の方針を一定に認める形でひとまず決着した。だが、移転の関連費用を含む当初予算案とともに可決された、市民への丁寧な説明や十分な議論を求める決議は重い。市は、これまで以上に丁寧に議論を積み上げる必要がある。

 市民や議会が反発した最大の要因は、移転を打ち出したプロセスが分かりにくいことだ。市は当初、中央図書館がある中央公園内での再整備を検討する方針を示した。それが、検討エリアに駅周辺を加えると市議会に報告して3カ月足らずのうちにエールエールA館への移転方針を表明。経緯や理由について公開の場での説明はなく、唐突感が広がった。

 市は利便性や費用面から移転の必要性を強調。有利な起債を使えるタイミングも理由に挙げた。時期を逃さずに整備を進めたい考えは理解できる。だからといって十分に議論する場を設けない理由にはならない。どんな図書館にしたいのか、市民とビジョンを共有する必要もあるだろう。

 決議は自治体が施策を進める上で、いわば当たり前の姿勢を求めた。市民の理解を得るには、愚直に説明責任を果たしていくほかに近道はない。(余村泰樹)

(2022年3月18日朝刊掲載)

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