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社説・コラム

天風録 『アラームを止めるには』

 新型コロナの「まん延防止」が列島全てで明けたかと思いきや、今度は「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」である。止めても鳴る目覚まし時計のよう。戻り寒波でも暖房を控えめにとは、関東や東北地方の皆さんはさぞ、つらい思いに違いない▲地震の大揺れで火力発電所が停止したためとの理由は分かる。だとしても事前の備えは万全だったのか。素人考えだが、電力会社の垣根を越えて融通し合う送電線はもっと太くできそう▲うららかな陽気が続く瀬戸内の里山には別のアラーム音が響き始めている。「豚熱(ぶたねつ)」にかかった野生イノシシが相次ぎ見つかった。豚に感染し、その肉を食べたとしても人に影響はない。とはいえウイルスよ、黙って退散してくれないか▲どれも地球が発する警告だと、大げさに受け止めた方がいいかもしれない。エネルギーも食料も際限なく手に入ると錯覚しがち。災害や感染症が起きて初めて、かけがえのなさに気付く▲水も食料も暖房もない地下室で絶望の夜を過ごす大勢の人がウクライナにいる。その隣国には、資源を持つから強いと勘違いしたかのような独裁者がいる。食料とエネルギーを損得抜きで国際管理するのは夢のまた夢なのだろうか。

(2022年3月23日朝刊掲載)

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