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山代巴の思想 風化させまい 三次の研究所 7000点 市に保存・活用要望

 広島県三次市の山代巴文学研究所のメンバー6人が21日、作家の山代巴(1912~2004年)にまつわる市所有の資料約7千点の劣化を防ぎ、山代の思想を風化させないために活用するよう求める要望書を、同市の増田和俊市長に提出した。書簡や手記をマイクロフィルムにして残すことなどを提案した。(桜井邦彦)

 資料は、人権、平和を進める旧三良坂町のまちづくりに共感するなどした山代や関係者が、同町に寄贈。総数は7025点。山代が戦時中、三次刑務所に収監されていた時の手記や、家族との往復書簡、直筆の原稿などがある。

 同研究所の鷲尾操副所長(65)=三良坂町=が市役所で増田市長に要望書を手渡した。増田市長は「山代巴さんの資料は三次にとって貴重な文化財産。引き継いでいくのは行政の責任」とし、保存活用の方法を検討する考えを示した。

 資料のうち、山代が晩年使った座椅子など約600点は三良坂コミュニティセンター内の記念室に展示。残りは種類別に183箱に分けられ、市三良坂支所の元会議室に保管してある。酸化や紫外線による劣化を防ぐ袋に入れてあるが、この部屋では温度や湿度を十分調整できないため、劣化につながる恐れがあるという。

 かつて資料整理に携わった元中学校教諭の佐々木暁美さん(73)=大田幸町=は「獄中の手記などは人権、平和を守る社会づくりを目指した山代の原点を伝える貴重な資料」と言う。

 また、山代研究者で元東京経済大助教授の牧原憲夫さん(70)=東京都西東京市=は「山代巴の資料というだけでなく、獄中での両親との手紙など戦時中の庶民の生活史としても価値がある」と話す。

(2013年10月22日朝刊掲載)

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