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民間受け入れスタンバイ 中国地方 住居提供や通訳 協力

 ロシア軍の侵攻でウクライナから退去する避難民を受け入れようという動きが中国地方の企業や市民に広がっている。侵攻から24日で1カ月。戦禍は拡大し、国内外への避難民は1千万人を超えるといわれる。混乱が長期化する中、自治体に加え、市民たちも空き家の提供や日本語教育で「少しでも力になりたい」と支援に手を挙げている。(高本友子)

 「無差別の攻撃で孫と同い年くらいの子どもが亡くなった。胸が痛い」。広島市西区の運送会社副社長の久保真也さん(60)は佐伯区湯来町に所有する空き家2軒を無償でウクライナからの避難民に貸し出すと決めた。

 木造2階建てと隣接する平屋の2軒。電気や水道も通り、すぐに住める状態だ。町内にある会社の倉庫で働けるよう調整もする。「家族で安心して暮らしてもらえたら」。出入国在留管理庁が住まいや就労の支援情報の提供を呼び掛けているのを知り、支援できる内容を17日に登録した。

 政府は今月2日、避難民を受け入れる方針を発表。同庁によると、21日までに親族が日本に住む人たち160人が入国し今後、日本に親族がいない避難民の入国も想定されるという。その数はさらに増える可能性があり、中国地方でも自治体や企業、団体が相次いで支援を表明している。

 中国5県では、広島、山口、岡山、鳥取の4県が24日までに避難民を受け入れる考えを明らかにし、島根は検討中。市町村では呉市や廿日市市、東広島市、安芸太田町なども受け入れを公表した。多くは公営住宅の無償提供が軸となるが、相談体制の整備などソフト面のサポートは「民」の力が重要になる。

 通訳で支援したいというのはひろしま通訳・ガイド協会(広島市中区)に所属する橋村ますみさん(47)=西区。1996年と98年にウクライナの首都キエフに留学し「惜しみなく食事や服の世話をしてくれたおかげで留学が乗り切れた。恩返しのつもりで協力したい」と力を込める。

 広島市留学生会館(南区)で日本語教室を開く佐藤雅子さん(72)=西区=も広島県に協力を申し出た。「買い物一つでも日本の生活文化が分からず苦労するはず。地域での暮らしを支える窓口になりたい」。日常生活を奪われたウクライナの人たちを支える覚悟を固めている。

 出入国在留管理庁は「住まいや就労がスムーズにマッチングできるよう情報があればぜひ寄せてほしい」とし、電話やメールで情報を募っている。☎03(5363)3006=平日午前9時~午後5時。メールアドレスはzairyushien02@i.moj.go.jp

(2022年3月25日朝刊掲載)

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