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避難民 カレーで温かく ウクライナ侵攻1ヵ月 ポーランドで活動 広島市出身の八木さん

子どもたちの姿 「胸痛む」

 ポーランドの首都ワルシャワで飲食店を経営する八木皓平さん(38)=広島市安佐南区出身=が、ロシア軍の侵攻を受けて国外へ避難するウクライナ人を支援している。温かく、栄養のある食事を取ってもらおうとカレーライスを無償で配っている。中国新聞のオンライン取材に、避難民の様子や平和への思いを語った。(標葉知美)

 八木さんは6日から、多くの避難民が逃れてくるワルシャワ中央駅近くで、野菜カレーと鶏の唐揚げを提供している。車で15分の距離にある自らの店で調理し、駅前にある避難民用のテントに届ける。周囲の飲食店と一緒になった支援活動で、最近は毎日30~50食を作る。

 長時間の移動に疲れて寝ている人、ドイツなどに向かうバスや列車を待つ人…。「駅舎内は人で埋め尽くされている」と明かす。ウクライナは18~60歳の男性の出国を原則認めておらず、多くは女性と子ども。「まだ寒く、温かい食事が喜ばれる。子どもが野菜不足にならないよう甘口カレーにした」と気遣う。

 支援の輪の広がりも感じている。カレーのルーは、日本人が経営する現地の食料品の小売業者から寄付を受けた。八木さんも「僕らにできることがあれば役に立ちたい」と、ポーランド人の妻(37)と地元のボランティア団体に、国境付近の店で不足している生理用品を寄付した。

 八木さんは店と、仕込みのための工場で計約20人を雇っている。うち半数はウクライナ人。ビザの切り替えで母国に戻った女性社員は今もウクライナの自宅に取り残されたまま。「彼女は乳児を抱えた知人の家族が車ごとロシア軍に爆撃されたのを見て、家から出られないでいる」と話す。

 仕事も行き先もなく途方に暮れる避難民も多い。今月、小学生の子どもを連れて避難してきた女性2人を雇い入れた。2人の子どもを育てる八木さんは「子どもたちを見ると胸が締め付けられる」。できる限りの支援を続けると言い切る。

 ロシアの侵攻に協力するベラルーシと隣り合うポーランドでは「次は自分たちが攻撃される」と話す人が増えている。八木さんも「戦争」の2文字が身に迫っていると感じる。祖母が被爆者で高校までを広島市内で過ごした。「幼い頃から平和の尊さを学んできたが、こうも簡単に壊されるとは…」と唇をかむ。

 大学を卒業してポーランドへ渡った八木さん。「1カ月前まではみんな本当に普段通り、平和に暮らしていた。ウクライナで起きていることは対岸の火事じゃない。日本でも、平和が当たり前ではないと考える機会にしてほしい」と訴える。

(2022年3月25日朝刊掲載)

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