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平和公園の地 営みがあった 「被爆遺構」施設開館

 現在の平和記念公園(広島市中区)の地下に残る、米軍の原爆投下で壊滅した旧中島地区の被爆遺構の展示施設が26日、同公園内に開館する。民家や商店が立ち並んでいた街並みの痕跡を通じ、市民の暮らしが一瞬で奪われた被爆の悲惨さを伝える。25日、オープニングセレモニーがあった。

 施設は鉄骨平屋で、市の発掘調査で見つかった遺構のうち、焼失した民家跡などを含む約3・2メートル四方を展示する。民家の基礎の石材、焼けた土や瓦、通りのアスファルトなど発掘された実物を間近に見られる。炭化した畳や板材は劣化しやすいため複製を置いた。遺構の解説など約2分半の映像も上映し、被爆前の写真や元住民の被爆証言を紹介するパネルもある。

 展示は被爆75年事業の一環で、当初は2020年度中の公開を目指したが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期した。松井一実市長は「ここで暮らした人たちの日常が一瞬で失われた非人道性を心に刻んでほしい」とあいさつ。展示に助言する市の有識者懇談会座長を務めた三浦正幸・広島大名誉教授(建築史)は「遺跡保護のためには埋め戻して複製を展示するのがいいが、現代に原爆の悲惨さを伝えるためあえて実物展示とした。遺跡の力を平和に役立ててほしい」と願った。

 開館時間は、7月までは午前8時半~午後6時。8月は同7時まで開く。入場無料。(明知隼二)

(2022年3月26日朝刊掲載)

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