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77年経て母校の修了証書 原爆孤児の友田さんに袋町小が授与式 「生きていてよかった」

 袋町小(広島市中区)は25日、前身の袋町国民学校で被爆して原爆孤児となった友田典弘(つねひろ)さん(86)=大阪府門真市=を招いて修了式を開いた。5、6年の児童約60人が見守る中、4年生の途中までしか通えなかった友田さんは念願の修了証書を受け取った。(湯浅梨奈)

 「友田さんにとって袋町小が母校だという証しです」。福田忠且(ただかつ)校長が式辞を述べて修了証書を手渡すと、友田さんは時折涙ぐみながら「苦しかったが、本当に生きていてよかった。夢のよう」と話した。児童を代表して、5年上田一慶さん(11)が「私たちは母校が同じ仲間です。これからも仲良くしてください」と語り掛けた。

 同小の計らいは、昨年10月に友田さんを招いて被爆体験を証言してもらったのがきっかけだ。その後、福田校長が「初等科第三学年」の修了証書の授与を提案した。

 友田さんは77年前、爆心地からわずか460メートルの校舎地下で被爆した。当時4年生。弟幸生さん=当時(8)=たち大勢の児童が校庭で黒焦げになっていた。母親も見つからず、独りに。間もなく、友田さんの自宅に下宿していた朝鮮人男性とともに朝鮮半島へ渡った。1950年に始まった朝鮮戦争では何度も命の危険にさらされ、野宿生活も長年にわたり余儀なくされた。

 24歳で帰国を果たした後も苦労を重ねた。今、ロシアによるウクライナ侵攻に胸を痛めている。修了式の後、市民が強いられる原爆と戦争の痛みを身をもって知る友田さんは「砲弾が飛び交っていた朝鮮戦争を思い出す。戦争はあかん」と力を込めた。

(2022年3月26日朝刊掲載)

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