×

連載・特集

[中国新聞Under35] 映画「ドライブ・マイ・カー」 ロケ地巡り 深まる広島愛

 日本時間28日発表の米アカデミー賞の候補となっている映画「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介監督)。大半が広島県内で撮影されています。しっとりとした人間ドラマの背景に映し出されるのは、身近な広島市内や瀬戸内の風景。見慣れているはずなのに、いつもより魅力的に映るのが不思議です。受賞への期待を込め、広島のロケ地にあらためてスポットを当てました。(馬場洋太)

 映画は村上春樹の短編小説が原作。西島秀俊が演じる舞台演出家の家福は、秘密を抱えた妻に先立たれ、行き場のない喪失感に苦しむ。2年後、「広島演劇祭」の演出を任された家福は愛車サーブで広島入りし、運転を任せた専属ドライバーみさき(三浦透子)と過ごす中で目を背けてきたあることに気付く。

 スクリーンには、広島市中区の平和記念公園や広島国際会議場、平和大通りや新天地公園など、なじみ深い風景が次々映し出される。濱口監督の作品の特徴でもある長い会話劇のいくつかは、走行中の車内で撮影された。広島高速4号線(西区―安佐南区)のトンネルのシーンが代表格だ。

 夜景のシーンも多く、グランドプリンスホテル広島(南区)や広島高速3号線(南区―西区)などが幻想的に描かれる。対照的に、呉市の安芸灘とびしま海道で撮られた瀬戸内の穏やかな情景は、作品に爽やかな風を吹き込んでいる。

 濱口監督が「自分史上最も美しい映像が撮れた」と話す作品は国内外で賞レースを席巻。これまでにゴールデングローブ賞の非英語映画賞、英国アカデミー賞の非英語映画賞、日本アカデミー賞などを受賞している。

(2022年3月27日朝刊掲載)

年別アーカイブ