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被爆遺構 100メートル南に移設 サカスタ建設地から出土 広島市方針 石畳の一部など

 広島市は、中央公園広場(中区)のサッカースタジアム建設地で出土した旧陸軍の輸送部隊「中国軍管区輜重(しちょう)兵補充隊」(輜重隊)施設の被爆遺構の一部を、建設地南側の緑地帯に移設する方針を固めた。輜重隊が飼育した軍馬を弔う馬碑のそばに展示する。建設用地内には遺構の石畳を使ったモニュメントも置く。4月1日から方針に対する市民意見を募る。(新山創)

 移設先は、建設地から城南通りを挟んで約100メートル南側にある緑地帯の一角。輜重隊で物資を運んだ軍馬を弔い、1928年建立の馬碑がある。関係の深い遺構を一体的に展示することで、戦前の広島の姿をイメージしやすいと判断した。

 移設する遺構は、軍馬の手入れ場の石畳12枚▽厩舎(きゅうしゃ)の入り口の石畳25枚▽厩舎のアスファルトの床の一部―の3カ所計23平方メートル。昨年9月に切り取り、建設地で保管していた。緑地帯には出土場所などを説明する案内板も置く予定でいる。

 また、市はこの3カ所とは別に被爆遺構の石畳数枚を使い、建設用地内にモニュメントを設置する方針でいる。スタジアムを訪れる人に輜重隊の歴史を伝え、馬碑周辺の遺構も併せて紹介する。一連の活用案を市ホームページに載せ4月28日まで意見を募る。

 被爆遺構は2020年10月に始めた建設地の発掘調査で見つかった。市は一部を切り取って移設する計画を示したが、複数の被爆者団体や市民団体が保存対策が不十分だと訴え、再検討や建設地での保存を市に求めていた。市文化振興課は「スタジアムに近い場所で遺構について知らせ、移設先に誘導するべきだとの専門家の意見を踏まえて建設用地にモニュメントを置くことにした。市民の意見を踏まえて有効な見せ方を検討したい」としている。

(2022年3月30日朝刊掲載)

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