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「脅しでの対抗は破局」 広島の被爆者ら失望 米NPR発表

 米国防総省は29日までに、バイデン政権で初めてとなる新核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」の概要を公表した。「安全で効果的な核抑止力と強力で信頼できる拡大抑止の維持は最優先事項だ」として「核の傘」の堅持を明記。核の役割を敵の核攻撃阻止や反撃などに限定する「唯一の目的」宣言は見送った。核兵器廃絶に取り組む市民や広島の被爆者から失望の声が上がった。

 バイデン氏は「核兵器のない世界」を掲げたオバマ政権で副大統領を務めていた。核兵器廃絶を目指す若者でつくる「ノーニュークストーキョー」の共同代表で慶応大3年の高橋悠太さん(21)=福山市出身=は「バイデン氏は核軍縮に向けた判断ができると期待していたのに」と残念がる。

 ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻で核兵器使用を示唆する発言をするなど核兵器廃絶の議論に逆風が吹く。高橋さんは「国際社会が廃絶の方向にかじを切るために声を上げ続ける」と力を込めた。

 「抑止力では戦争を止められなかった。脅しに脅しで対抗すれば行き着く先は破局だ」。国内外で証言活動をしてきた被爆者の田中稔子さん(83)=広島市東区=も抑止力を強調する内容を危惧する。「核兵器が使われたらどれほど悲惨か、諦めずに訴え続けるしかない」と悔しがった。(明知隼二、小林可奈)

(2022年3月31日朝刊掲載)

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