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米岩国基地の寄港急増 05~20年度5隻 ▶21年度17隻 進む拠点化

専門家「国際情勢で加速も」

 極東最大級の航空基地である米軍岩国基地(岩国市)で、艦船の寄港が急増している。岩国市は2021年度、強襲揚陸艦など米海軍を中心に延べ17隻を確認した。現在の港湾施設が完成した05年度から20年度までの計5隻に比べ、突出している。専門家は「米軍の戦略上、岩国の拠点化が進んでいる。ロシアのウクライナ侵攻など国際情勢次第では状況は加速する」と分析する。(有岡英俊)

 21年度の艦船の寄港は昨年5月、米海軍佐世保基地(長崎県)所属の掃海艦パトリオットから始まった。10月に「遠征洋上基地」と呼ばれる艦船ミゲルキース、11月には強襲揚陸艦アメリカと米海軍の大型艦船が相次いで初寄港した。

 今年2月、上陸作戦に用いられるドック型揚陸艦アシュランドが入港した。3月には、空母で着艦事故を起こした最新鋭ステルス戦闘機とみられる機体を積んだ潜水作業支援船ピカソも訪れた。

 港湾施設は、岩国基地の滑走路沖合移設に合わせ、補給物資の荷揚げ作業を目的に国が整備した。21年度は艦上訓練や運用能力の確認など荷揚げ以外も目立つ。海上自衛隊が事実上の空母に改修中の護衛艦いずもは、同基地所属のステルス戦闘機と発着艦テストをするための準備に寄港した。

 在日米軍の動向に詳しい沖縄国際大の野添文彬准教授(国際政治学)は「米軍は国際情勢に臨機応変に対応するため戦力を分散化する戦略。自衛隊を含めて部隊を運用し、アクセスできる拠点をつくろうとしている」と指摘。「ウクライナ侵攻や台湾有事の懸念を踏まえると、岩国基地は中ロに対し都合のいい立地にある。滑走路と港湾があり、米軍と自衛隊が共同利用する岩国は統合運用のモデルになる。情勢が緊迫化すれば基地の機能強化が進む可能性はある」と分析する。

 岩国市と山口県は艦船の母港や定期的な寄港地とならないよう、国に繰り返し要請している。だが、入港目的を含め、米軍から事前に国を通じた情報提供なしに寄港したケースもある。

 福田良彦市長は「いずれの寄港も一時的で市民生活への影響は少なく、問題とは考えていない」との認識を示す。一方で「寄港が一時的か定期的かは現段階では判断できない。今のような状況が今後も続くようであれば、市として評価、整理していかなければならない」としている。

(2022年3月31日朝刊掲載)

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