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島根原発 安全協定見送り 3市と中電 溝埋まらず

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)30キロ圏の出雲、雲南、安来の3市が中電に求めた立地自治体並みの原子力安全協定の締結は23日、昨年10月に続き見送られた。再稼働手続きの開始を控え、事故のリスクを根拠に発言権を求めた3市。中電は立地自治体への配慮から対応を変えず、両者の溝は埋まらなかった。(樋口浩二、土井誠一)

 「福島ではまだ原発20キロの町民が避難し、仮設住宅で暮らしている」。この日の締結見送りを受け、安来市の近藤宏樹市長は中電に訴えた。島根原発から最短22キロに位置する市の危険性に理解を求めた。

 中電は「40年以上前の1号機の建設当時からお世話になっている」(島根原子力本部の古林行雄本部長)と、重要な権限は県と松江市に限る考えを貫いた。「時代の認識が古いのでは」。近藤市長は、福島の事故後も権限の拡大に応じない姿勢を批判した。

 3市が発言権を求めた背景には、中電が定期検査で停止中の2号機で、年内に安全審査を申請するとの見通しがある。福島の事故後、全国の電力会社で周辺市に重要権限を広げた事例はなく「締結のハードルは高い」(雲南市の速水雄一市長)としつつも、再度の要求に動いた。

 一方、出雲市の長岡秀人市長はこの日「事業者だけに要望しても良い回答は得られない」と強調。3市で近く、電力会社が周辺自治体とも立地自治体並みの協定を締結する仕組みをつくるよう、国に要望する考えを示した。

 福島の事故で原発約32キロの福島県いわき市から出雲市に避難した吉田勉子さん(72)は市に求める。「パフォーマンスではなく、住民の安全を最優先する覚悟で今後も権利を主張してほしい」

(2013年10月24日朝刊掲載)

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