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戦火の母子 福山に避難 ウクライナから家族3人 残った夫の安否気遣う

 ロシアのウクライナ侵攻を巡り、国外に逃れたウクライナ人の家族3人が福山市内に身を寄せている。親交のある市民が手続きや住まいの確保に奔走し、知人も支援に協力する。中国地方でのウクライナの避難民の受け入れは初めてとみられる。家族は周囲のサポートに感謝しながら母国を気に掛け、一日も早く平穏を取り戻すよう望んでいる。(佐伯春花)

 避難してきたのは、タチアナ・カトリッチさん(49)、娘のビクトリアさん(23)、孫で7カ月のソフィアちゃん。ウクライナ南部のミコライウから隣国のモルドバ、ルーマニア経由で避難した。3月25日にブカレストの空港を出発し、翌26日午後に成田空港へ到着。27日に福山市に入り、在留資格の変更手続きを済ませた。

 関係機関への連絡や各種手続きの調整などでカトリッチさん一家を支援しているのは、福山市の不動産会社役員の西谷友宏さん(58)。3年前、ウクライナを訪れていた際に風邪で高熱を出し、宿泊先のホテルで働いていたビクトリアさんの父アナトリーさん(52)が医師だったことから家族と交流が始まった。

 西谷さんは3月上旬、ビクトリアさんから爆撃音で夜も眠れないと連絡を受け、日本に避難するよう促した。「戦火から逃れた家族を放っておけない」と航空チケットを手配し、来日後はホテルの宿泊費や飲食代も負担。知人の斉藤かおりさん(61)=同市=たちも自宅を宿泊先として提供するなどして支援している。

 「フレンドリーで良くしてくれる日本人がそばにいてくれて本当にありがたい」とタチアナさん。一方で軍医として現地に残る夫のアナトリーさんの安否を気に掛ける。毎日、電話で現地の様子や体調を確認しているが、夫は家族に心配をかけまいと多くを話そうとしないという。

 家族を残したまま避難できないと、現地に残る選択をした友人も多い。そんな中、ビクトリアさんのスマートフォンに29日、ミサイルの攻撃を受けた自宅近くの州庁舎の写真が友人から送られてきた。攻撃で15人が死亡したとされ、うち1人は友人だった。「すぐにでも帰りたいが、自宅近くの道路もロシア軍によって封鎖されていた。一日も早く平和な日常を取り戻したい」と願う。

(2022年4月2日朝刊掲載)

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