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アラブの子に母語教育 広島市立大准教授らオンライン授業

支援団体設立 CFも 「異国での成長見守る」

 県内で暮らすアラブ人の子どもたちに母語のアラビア語を学ぶ機会を無償で提供しようと、広島市立大(安佐南区)の田浪亜央江准教授(中東地域研究)たちが支援団体をつくった。17日からオンライン授業を始める。母語教育を通じて異国で暮らしている子どもたちの成長をサポートする。(小林可奈)

 団体は「アラブの子どものための母語教育協会」(アナーラ)。田浪准教授のほか、県内で子育てをしているアラブ人の保護者たち3人が中心となり、発足させた。

 オンライン授業は、小学1~6年のアラブ人の子どもを対象とする。学年ごとに定員5人までのクラスをつくり、各クラス週3日、1日1時間の授業をする。講師はシリア出身のアラブ人の保護者2人が務め、文法や語彙(ごい)、表現を教える。

 田浪准教授によると、2011年に中東と北アフリカを席巻した民主化運動「アラブの春」以降、祖国を離れて日本で暮らしているアラブ人は少なくない。紛争や政変などで混迷が深まったのが背景にある。法務省の統計に基づくと、県内には、アラブ人が多いシリア出身者が19年末時点で62人おり、15年末の32人から倍増した。

 一方、日本国内でアラビア語の読み書きを学ぶ場は限られる。異国で生きるため保護者も仕事などに追われ、十分に教えることができない。保護者たちから母語教育の必要性を説く声が寄せられたため、アナーラの発足を決めたという。

 講師の人件費に充てるため、6月13日までクラウドファンディング(CF)で資金を募っている。田浪准教授は「母語の習得は宗教や文化の継承を支えるだけでなく、知性や精神面でも重要だ。継続的で安定的な教育環境を整え、異国で生きるアラブの子どもたちの成長を見守っていきたい」と話している。

(2021年5月2日朝刊掲載)

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