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こうの史代さん 鎮魂の壁アート 広島・おりづるタワー 戦後100年に向け願い

 「この世界の片隅に」などで知られる漫画家こうの史代さん(53)=広島市西区出身=が、中区の「おりづるタワー」でウオールアートを完成させた。おりづるタワーが4日、発表した。般若心経の中にカープ帽をかぶったコイやハトを潜ませて「ラブアンドピース」を表現。今ここにいない誰かへの思いを込める。

 屋上の展望台に続くスロープの壁面を彩るアートは「戦後100年の2045年に向けた願い」がテーマ。広島ゆかりのアーティスト9人が参加した。こうのさんは、幅24メートル、高さ4メートルの壁面に、梵字(ぼんじ)で横書きにしたサンスクリット語の般若心経を描いた。温かみのあるタッチのハトやコイをちりばめてあり、遠くから全体を見ると青とオレンジ色の手が握手する姿が浮かぶ。

 こうのさんは「広島には平和祈念と慰霊の二つの面がある。被爆した方と時間的に遠ざかるにつれ、慰霊の面は薄れる。2022年にはまだ、幾多の慰霊の念が色濃く残っていたと伝えたかった」と語る。

 1995年に漫画家としてデビュー。戦時下の広島や呉を舞台にした「この世界の片隅に」は16年にアニメ映画化され、大ヒットした。「(ヒロシマを)今まで語り伝えようと頑張った人たちの苦労が身に染みて分かってきた。感謝しながら描いた」と話している。

 11日に完成披露会があり、入館すればアートを見ることができる。入館料は大人1700円、中高生以下は割引がある。(加納亜弥)

(2022年4月5日朝刊掲載)

こうのさんのインタビューはこちら

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