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一方的に侵略された国 いつもどこかで爆発音 キーウ勤務の親子 雲南に一時帰郷

現地の惨状語り支援訴え

 ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナの首都キーウ(キエフ)の国立大学で日本語を教える前島知子さん(52)と、現地のIT会社でプログラマーとして働く一人息子の雄太さん(22)が、一時避難で雲南市大東町の実家に身を寄せている。「ただ一方的に侵略し、侵略された国があると理解してほしい」。桜が咲き誇る古里と懸け離れた現地の惨状に思いを寄せ、支援を訴えた。(寺本菜摘)

 知子さんは1994年、ロシア語の勉強のためキーウに移り住み、ウクライナ人の男性と結婚。夫とともに7年間、日本で暮らした後、生まれた雄太さんを連れてキーウへ戻った。夫が病気で亡くなった後も息子と2人、住み慣れた現地で暮らす。

 ロシア軍の侵攻が始まる前の2月14日、知子さんはいち早く隣国ポーランドのワルシャワへ避難したが、雄太さんはとどまり、戦禍を体感した。「いつもどこかで爆発音が聞こえ、サイレンも毎日10回くらい鳴っていた。外には誰も出ていなかった」と顔をこわばらせる。

 電車やバスを乗り継ぎ、知り合いの家に泊めてもらいながらポーランドへ逃れたのは侵攻開始から9日後の3月5日。知子さんは「合流するまで息子がどうしているか分からないのはつらかった」。近隣国へ逃げた同僚や知人たちは早期停戦を願い、ウクライナに帰りたがっているという。

 2人は同15日にワルシャワを出発し、24日に雲南市に入った。20年ぶりに桜を見たという知子さんは「あまりにも平和でどれが現実か分からない」と複雑な思いを明かす。多くの市民の犠牲が伝えられるキーウの惨状、ワルシャワでの炊き出しの風景…。「全てがパラレルワールドのよう」

 雲南市役所で4日、石飛厚志市長と面会し、現地の混乱を伝えた知子さんは「医療品と食料などが足りない」と援助を呼び掛けた。

(2022年4月6日朝刊掲載)

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