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岩国基地 騒音3万回超 露の侵攻で米軍機訓練活発化か 21年度 沖合移設後で最多

 米軍岩国基地(岩国市)周辺で70デシベル以上の騒音測定が2021年度に3万回を超え、滑走路が沖合に移った10年度以降で最多となったことが6日、岩国市のまとめで分かった。例年より1カ月早い空母艦載機の帰還や、ロシアのウクライナ侵攻などの国際情勢を受け、運用が活発化しているとみられる。測定回数が沖合移設前の水準に近づき、住民は懸念を深めている。

 市は騒音測定器を市内5カ所に置いている。「大声を出さないと会話ができない」とされる70デシベル以上は3万586回あり、20年度より17・6%増えた。3万回を超えたのは沖合移設前の09年度(3万2119回)以来となる。

 昨年10月以降に増え、基地に近い尾津町では毎月1100~1400回台となった。10月上旬に艦載機約60機が帰還し、12月上旬に米空軍のステルス戦闘機F35Aが飛来して基地所属機と訓練を繰り返した影響と市はみる。

 年明け以降はウクライナ情勢の緊張が高まり、台湾海峡を巡る米中のせめぎ合いも先鋭化した。模擬弾を取り付けた艦載機のFA18スーパーホーネット戦闘攻撃機が四国沖で爆撃訓練をし、所属機のステルス戦闘機F35Bも沖縄沖で実弾訓練したとみられる。

 軍事評論家の稲垣治氏は「米軍は近年、戦力を分散して国際情勢に対応しようとしている。中国や北朝鮮の動きを見据え、沖縄の基地で情報監視の役割を強めた分、岩国では航空機の運用の拠点化を進め、騒音も増えた」とみる。

 沖合の滑走路が使われ始めた10年度に騒音は3万回を下回り、以降は1万回台だった。しかし米軍再編の一環で18年3月に艦載機約60機が移転してからは2万5千回以上が続く。基地に隣接する旭第一自治会の江波(えなみ)三郎会長(76)は「21年度は特にうるさく感じた。この状況が続き、沖合移設前に戻ってはいけない」と懸念する。(有岡英俊)

(2022年4月7日朝刊掲載)

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