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北朝鮮 安保理決議に反発 ウラン濃縮着手表明

 国連安全保障理事会(15カ国)は12日(日本時間13日未明)、2回目の核実験を先月25日に実施した北朝鮮に対する貨物検査の強化や新たな金融制裁、武器禁輸の拡大などを盛り込んだ日米など提出の追加制裁決議案を全会一致で採択した。決議番号は1874。北朝鮮は13日、軽水炉建設に向けたウラン濃縮着手を表明するなど強く反発した。北朝鮮がウラン濃縮着手を公式に表明するのは初めて。

 決議に反発し3回目の核実験を準備中との報道もある北朝鮮は、同日の外務省声明で、再処理を再開した使用済み核燃料棒から新たに抽出するプルトニウム全量を兵器化することやウラン濃縮着手を発表。貨物検査など制裁が実施された場合には「戦争行為とみなし軍事的に対応する」と表明した。

 北朝鮮への安保理決議は2006年の核実験を受けた決議1718以来。安保理会合に北朝鮮代表団は出席しなかった。

 高須幸雄国連大使は採択後の記者会見で「(北朝鮮が)さらに挑発的な行動を起こせば、事態の深刻さに応じて安保理として適切な行動を取るということだと思う」との考えを示した。

 決議案は、5常任理事国と日本、韓国の7カ国が安保理の枠外で協議し10日に合意、日米韓と英国、フランスが共同提出国になった。1718と同様に非軍事の制裁を規定した国連憲章7章41条に基づき、核実験を「最も強い表現で非難」、二度と行わないよう要求。

 貨物検査については、禁制品を積んでいるとみなす「合理的な理由」がある場合、各国に自国領内での検査を要請。公海上の船舶検査に関しては、船籍国の同意の下での検査を求めた。

 武器禁輸も範囲を拡大し、北朝鮮の輸出は全面禁止。金融制裁では、大量破壊兵器の開発につながる金融サービスや人道目的以外の支援・融資の停止を各国に求めている。

(共同通信2009年6月13日配信、6月14日朝刊掲載)


<解説>冷静に戦略的対応を

■記者 林淳一郎

 国連安全保障理事会が採択した追加制裁決議に、北朝鮮は核開発の加速で対抗する姿勢を鮮明にした。6カ国協議を離脱し、3度目の核実験もちらつかせる今、被爆国日本を中心に求められているのは冷静で戦略的な対応ではないか。それが北東アジアの安全保障、非核化につながることを忘れてはいけない。

 ウラン鉱山を持つ北朝鮮は1950年代後半から核開発を推進してきたとされる。2006年10月と今年5月25日に核実験を強行したが、核武装の実態はベールに包まれているのが実情だ。

 米シンクタンク、科学国際安全保障研究所(ISIS)は、北朝鮮が03年末段階で15~40キログラムのプルトニウムを抽出し、2~9個の核兵器を保有していると推定。だが、ウラン濃縮の状況は不明で、ミサイルに搭載できる弾頭小型化もどこまで進んでいるのか、多くの専門家は懐疑的だ。

 世界の核兵器事情に詳しい田窪雅文さん(58)=東京都=も「北朝鮮の核状況が激変したわけではない。過剰反応せずに見つめる姿勢が大事」と指摘する。

 北朝鮮の核開発は、健康不安がささやかれる金正日(キムジョンイル)体制の維持も背景にあるとされる。米国の核攻撃抑止との主張には、核を交渉カードに使う意図が透けて見える。

 5月の核実験以来、韓国では日本並みの核技術力を目指す「核主権論」が強まり、日本でも北朝鮮基地の先制攻撃論が出始めている。しかし核には核、脅しには武力で対抗するのが得策なのか。被爆国でありながら自国の安全保障を米国の「核の傘」に頼ってきた政策を再考する時でもあろう。核の脅威を取り除く非核化の道が、核兵器廃絶を願う被爆地広島の訴えであり、その姿勢こそが北朝鮮を動かす。

(2009年6月14日朝刊掲載)

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