×

連載・特集

岸田政権半年 私はこう見る <上> 核兵器のない世界 >中央大教授 目加田説子氏

 政権発足から4日で半年を迎えた岸田文雄首相(広島1区)。この間進めてきた政治はどんな成果を示し、いかなる課題が浮かび上がっているか。広島に深く関係する核兵器廃絶、「政治とカネ」問題、地方振興の3点に絞り、それぞれの専門家に評価を聞いた。

非保有国と連携を 「橋渡し」役 果たす好機

 ―首相は被爆地広島の選出であることを前面に訴え「核兵器のない世界」の実現を掲げています。
 被爆国にヒロシマを地盤とする首相が誕生し、その首相が世界に核兵器の廃絶を発信する意義は大きい。歴代政権にはなかった姿勢で、率直に期待している。

 首相は外相時代、米オバマ大統領の広島訪問にも貢献した。当時副大統領だったバイデン大統領と「核兵器のない世界」の理念を共有しており、協力して具体的な行動を取ってほしい。

大国のどう喝

 ―ウクライナを侵攻したロシアのプーチン大統領が核兵器で威嚇しています。
 核超大国のロシアが侵略戦争を仕掛けた上、核兵器によるどう喝をした。国際社会は「核兵器は使われない」という思考停止状態から脱する時だ。日本をはじめ多くの国が信奉する「核抑止力」は核兵器保有国が使用を自制する前提の下に成り立っている。ひとたび使われた場合の惨状に思いを巡らせ、いかに核兵器を減らしていくかを早急に考える必要がある。

 ―首相は、米国の核兵器を共同運用する核共有政策は退けました。
 非核三原則を掲げて早々に「議論しない」と言い切った点に信念を感じた。武力に頼るのではなく、被爆国ならではのソフトパワー外交で核軍縮の旗振りに力を注いでほしい。

 ―米国との信頼関係構築が最も重要という外交姿勢をどうみますか。
 米国との関係は重要だ。だが、外相として各国との交渉に当たった経験を持つからこそ、米国一辺倒ではなく視野を広げ、核兵器を持たぬ国々とのパイプも築いてもらいたい。

 ―非保有国が主導し発効させた核兵器禁止条約への参加に首相は消極的です。
 常々、保有国と非保有国の「橋渡し」を掲げてきたのだから、非保有国の意見に耳を傾けないといけない。6月にある禁止条約の第1回締約国会議に何らかの形で関わってほしい。

被爆国として

 ―8月には核拡散防止条約(NPT)再検討会議も予定されています。
 ロシアの暴挙でNPT体制は揺らいでいるが、危機は核軍縮の好機でもある。被爆国として脅威を訴える役割は日本にしか果たせない。核軍縮の誠実な交渉を義務付けたNPT第6条に今こそ立ち返ってほしい。

 ―広島県・市は、日本で来年開催される先進7カ国(G7)サミットの首脳会合の誘致を進めています。
 首相にはぜひ、広島開催を決断してほしい。世界に向けて非戦のメッセージを発信する大きな意義がある。(聞き手は樋口浩二)

めかた・もとこ
 静岡県富士市生まれ。上智大卒業後、米ジョージタウン大、米コロンビア大の両大学院を経て大阪大大学院博士課程修了。04年から中央大総合政策学部・大学院総合政策研究科教授。専門は国際政治学、国際公共政策。地雷廃絶運動にも関わる。

(2022年4月7日朝刊掲載)

年別アーカイブ