×

ニュース

国旗掲げ 同胞の無事祈る ウクライナ出身 三次のヤシチェンコさん 避難の親類5人 受け入れを準備

 ウクライナ出身で、三次市に家庭を持って20年になる女性がいる。激戦が伝えられる東部ドネツク州が故郷のオクサナ・ヤシチェンコさん(46)。ロシアの軍事侵攻で母国が戦火に包まれる中、自宅の玄関に国旗を掲げ、家族とともに現地の人々の無事を祈り続ける。いとこの家族5人が現在、日本へ避難する道中にあり、受け入れ準備も進めている。(石井千枝里)

 玄関ドア横に張った青と黄の国旗にヤシチェンコさんは、「戦争をやめて ウクライナに平和を」と記した。夫の建設資材販売業の石田一孝さん(67)と小学5年の次女晏奈さん(10)も同じ思いを強める。

 ヤシチェンコさんの母、姉、兄は現在、ロシア西部のボルゴグラード州で暮らす。一方、ウクライナには多くの親戚や友人が住んでいる。2月24日の軍事侵攻開始の直後、ドネツク州に住むいとこのイリーナ・ブワイロさん(36)に日本へ避難するよう促したという。

 「最初はテレビを見るのもつらかった」とヤシチェンコさん。夫が不在のブワイロさんと日々連絡を取り合い、激しさを増す爆撃や苦しみを聴いてきた。3人の子どもは12歳の長男、3歳の長女、6カ月の次女。「イリーナは眠れず疲れ果て『私の体じゃない』と言っている。命さえあればいい、と。それしか考えられないよう」と目を伏せた。

 日本への避難を決意し、出発したのは今月3日。列車で第2の都市ハリコフ、首都キーウ(キエフ)を経て4日にポーランドにたどり着き、夫と合流できたという。ヤシチェンコさんは「途中で連絡があるたび『頑張れ』と強く願った。何かあったらと本当に恐ろしかった」と話した。

 ヤシチェンコさんは20年前、旅行で訪れた日本で一孝さんと出会ったのがきっかけで三次市民となり、家族も増えた。自らも避難する人たちのために役立ちたいと、市が呼び掛けている、通訳や物資提供で協力する制度に登録した。

 一孝さんは「一般市民を攻撃の対象にするなんて。戦争を早く止めなければ」と憤る。ヤシチェンコさんは「ウクライナ、ロシア、日本、それぞれに家族や友人がいて心配。とにかく戦争はよくない。世界中が仲良くしてほしい」と強調し、ブワイロさん家族を温かく迎えるつもりでいる。

(2022年4月7日朝刊掲載)

年別アーカイブ