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「広島大仏」里帰りを 原爆犠牲者慰霊 奈良に安置中 実行委 CFで資金募る

 原爆犠牲者を慰霊するため1950年に原爆ドーム(広島市中区)横の西蓮寺に安置され、今は奈良県にある「広島大仏」を今夏に「一時帰郷」させようと、広島の企業経営者たちがプロジェクトを始動させた。実行委員会のメンバーたちが7日に市内で記者会見し、費用を賄うクラウドファンディング(CF)への寄付を呼び掛けた。

 広島大仏は、金箔(きんぱく)を施した阿弥陀如来坐像(ざぞう)で、高さ約3メートルの木製。1200年代の作とされる。

 実行委の計画では、7月から2カ月間おりづるタワー(中区)で公開し、8月6日に法要を行う。9月10日には花車に乗せて本通りを練り歩く。実行委員長を務める広島マツダ(南区)の松田哲也会長(53)は「戦後忘れられていた大仏を通して平和への願いを発信したい」と力を込めた。

 広島大仏は1960年前後から所在不明になっていた。極楽寺(奈良県安堵町)の田中全義(ぜんぎ)住職(36)によると、祖父が2004年ごろに古物商から大仏を譲り受けた。その由来に関心を抱いて文献調査を重ね、かつて広島にあったと11年に特定。以来「里帰りさせたい」と思いを温め、広島で講演する機会などを捉えて呼び掛けを続けた。共感した松田会長が旗振り役となり、10年越しで実現へと動き出した。

 大仏の輸送費用などをCFサイト「レディーフォー」で募り始めた。目標額は大仏の建立時期にちなみ1201万円。「広島大仏出開帳プロジェクト」事務局☎080(6342)1941。(湯浅梨奈)

(2022年4月8日朝刊掲載)

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