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原爆症認定 データ重視 基準明確化 厚労省最終報告案 被団協案も併記

 厚生労働省の原爆症認定制度の在り方に関する検討会が年内にまとめる最終報告の骨子案が25日、判明した。被爆距離などに基づき現行の認定基準をさらに明確にする見直し案を強調。新たな手当制度の創設を求める日本被団協の案や主張は、意見として記すにとどめた。安倍晋三首相は最終報告を受け、制度の見直しの在り方について判断する。

 検討会では、現行制度を前提に見直しを主張する委員と、制度創設を求める被団協の委員との間で議論は平行線をたどる。骨子案は双方の主張を盛り込んだものの、強弱を付けた。

 骨子案は、被爆者の高齢化や、司法判断と認定制度の隔たりを考慮する必要性を示した上で、全体的に被爆距離などの要件や科学的知見、データを重視して基準を明確化するよう提言している。

 積極認定する病気の対象は、白血病やがんなど現行の七つの病気以外に「明らかに対象とすべきもの」はないとした。「病名だけに着目して積極認定するのは慎重に考えるべき」だとも明記した。

 被団協は、残留放射線の影響も挙げ「正確な放射線量の検証は不可能」と訴えている。骨子案では、被団協の主張を記す一方で、科学的知見を踏まえて「残留放射線に着目して認定範囲を広げるのは適当でない」と反論も載せた。

 原爆症認定訴訟で争点となっている原爆放射線と病気との関連(放射線起因性)について、骨子案では、他の戦争被害との区別が必要として「放射線起因性を前提に認定の在り方を考えていくことが適当」とした。

 安倍首相は8月、検討会の最終報告を年内にまとめるよう厚労省に指示。首相が骨子案に沿って見直すかどうかは不透明だ。

 骨子案は今月29日、厚労省内である検討会の第24回会議で示される予定。(藤村潤平)

原爆症認定制度
 原爆症認定集団訴訟で国が相次ぎ敗訴したのを受け、2008年4月から現行基準に見直された。爆心地から3・5キロ以内で被爆▽原爆投下から約100時間以内に2キロ以内に入市―などの条件で、がんや白血病など七つの病気を積極認定。それ以外は総合判断で認定している。日本被団協は司法判断と行政認定になお隔たりがあると訴え、厚生労働省は10年12月、有識者による検討会を設置した。

(2013年10月26日朝刊掲載)

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