×

ニュース

モルドバ 医療負担大 避難民受け入れ ウクライナ隣国 人材・機材 支援拡充訴え JICA調査団長 広島大大学院の久保教授

 国際協力機構(JICA)の調査団が、ロシアの軍事侵攻でウクライナからの避難民を受け入れる隣国モルドバに入り必要な医療的な支援を探っている。第1陣の団長を務める広島大大学院医系科学研究科の久保達彦教授(公衆衛生学)は8日、現地からの報道機関向けのオンライン報告で、医療面の人手不足や施設の老朽化を指摘し「日本の持つ災害医療の経験と知識が求められている」と強調した。(新本恭子)

 九州ほどの面積に約264万人が暮らすモルドバにはウクライナから約40万人の避難民が入り、今も約10万人がとどまる。JICAは欧州最貧国とされる同国の医療保健を支えるニーズを把握するために調査団を編成し先月19日、災害医療や緊急人道支援が専門のメンバー6人が日本を出発した。これまで同国の病院や避難所を視察し、必要な支援を聞き取ってきた。

 久保教授は「もともとモルドバの医療体制は十分ではない。こうした環境で透析の必要な患者や妊産婦の避難民を受け入れており負担は大きい」と指摘。さらに避難民が押し寄せる可能性もあるとして、医療の人材と機材の拡充を訴えた。

 現地では世界中から集まる医療チームの調整役も担う。災害医療の経験が豊富な日本は各国のチームのコーディネートで貢献できるという。既に世界保健機関(WHO)と協力し、避難民の診療データをモルドバ保健省や各チームで共有できる体制をつくった。医療的ケアが要る避難民の割合が増えつつあることも分かってきたという。

 台風被害に遭ったフィリピンや国内の地震の被災地で経験を重ねた久保教授は「これまでの日本の災害医療の知見がモルドバでも生きる」と語る。「今回の軍事侵攻の先が見通せない。適切な支援をするためにウクライナの周辺国にも関心を寄せ続けてほしい」と力を込めた。第1陣は今月10日に帰国する。第2陣は上旬に現地に入り、引き続き医療ニーズを探ったり、各国のチームの調整役を担ったりしている。

(2022年4月9日朝刊掲載)

年別アーカイブ