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広島のアパート 若手芸術家集う アトリエ兼展示空間 ギャラリーも 紹介で輪 異色のアートスポットに

 広島市中区鶴見町のアパート「第2三沢コーポ」に、広島を拠点として活動する若手芸術家たちが集まっている。部屋をアトリエ兼展示スペースにしたり、ギャラリーを開いたり。自ら部屋を改装するDIY可能な賃貸物件であることが作家らに口コミで広がり、一風変わったアートスポットになりつつある。(福田彩乃)

 築45年の4階建て16室のうち、6室(各42または46平方メートル)をアート関係者が利用する。1階の1室には来年3月まで休館中の市現代美術館(南区)が館外拠点を設け、定期的に展覧会を開いている。階上の各室では、消しゴムのかすを使った立体作品で知られる現代美術家入江早耶さんたち3人がアトリエを構え、うち2人は展示スペースも備える。映像クリエーターらのグループが会議室に使っている部屋や、ギャラリーもある。

 広島市立大大学院で学んだ染織作家の平浜あかりさん(29)は、2年ほど前からアトリエとして使う。壁や床を塗り替えた上で高さ2メートル近い織機を持ち込み、創作に励む。「居心地の良い空間にカスタマイズできて作業に集中できる」。同大学院出身の染色作家、梅田綾香さん(28)は今年2月に入室。それまで手狭な自宅でろうけつ染めをしていたが、「ここなら大作に取り組める。染料が床に散らないか、気にし過ぎなくてもいい」と語る。

 作家ばかりでなく、美術展の企画などに携わる「アート・マネジャー」も入る。昨年末に4階でギャラリーを開設した山本功さん(29)だ。コンクリートむき出しの床に加え、板間、畳のスペースも設け、「タメンタイギャラリー 鶴見町ラボ」と名付けた。「それぞれ異なる雰囲気を生かすことで展示の幅が広がる」。すでに5回の展覧会を開いた。アパートに入室している作家と連携した展示も思い描く。

 アパートを管理する三沢管財(安芸区)の三沢正明社長(41)は、2017年からDIYを受け入れ始めた。「センスの良いDIYをしてもらえれば、部屋にとって価値のある変化になる」と話す。仲介業者は介さず、知り合いからの紹介制で入居者を決める。当初はアーティストの利用は想定していなかったが、偶然契約した作家が別の作家を紹介したり、展示を見た人が入室を希望したりして次第に増えた。

 6月ごろには新たに、海外のアニメーション作家が入居する予定。今夏に広島市内で始まる「ひろしま国際平和文化祭」の一環で半年程度、滞在する。その作家の退去後はアートファンの交流スペースにしようと三沢社長は構想する。「アパート全体がクリエーティブな場になれば。書店やデザイン事務所も入るともっと面白くなるかもしれない」と期待する。

16日 初のイベント
 16日午後1~5時、アパートとして初めての催し「オープン・デイ」がある。入室する大半のアート関係者がアトリエやギャラリーを公開し、作品を展示する。

(2022年4月13日朝刊掲載)

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