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社説・コラム

天風録 『国際法は決然と守るもの』

 ロシアのプーチン大統領が、ウクライナに仕掛けた戦争を「疑いなく悲劇だ」と語ったという。「だが他に選択肢がなかった」とも続けた。どうやら、国際人道法違反である市民への無差別攻撃をやめるつもりはなさそうだ▲こちらも包括的核実験禁止条約(CTBT)の存在など、どこ吹く風を決め込んでいるらしい。北朝鮮が地下核実験の再開を準備しているという。故金日成(キム・イルソン)主席の生誕110年を祝うつもりなら、あす15日がXデーだ▲国際法は守るものではなく破るもの―。孫の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記は、そう考えているのだろうか。核実験の他に選択肢がないというのなら、肉声できちんと根拠を示してもらいたい▲そこへ米国が昨年2回の臨界前核実験をしていたとのニュースである。米国も北朝鮮もCTBTを批准していない。臨界前は禁止対象外でもある。とはいえ、これでは米国に、他国の核実験を非難する資格はなかろう▲ロシアが条約で禁じられた化学兵器を使った疑いも浮上してきた。このままだと国際社会は、人道にもとる行為を繰り返してもおとがめなしの無法地帯に成り下がってしまわないか。まっとうな選択肢を早く取り戻さなければ。

(2022年4月14日朝刊掲載)

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